ベネッセ教育総合研究所 進研ニュース
2002.07
総合的学習の手法
ステップアップの工夫とヒント

第1回 時間割の編成

教科と総合的学習の時間数を偏りなく確保するテープ方式!

 

新学習指導要領の完全実施をひかえ、懸念事項として挙げられることが多い「時間割の編成」。「総合的な学習の時間」をどこにどう組み込んでいくのか、その工夫は各学校に任されている。そこで、以前より「テープ方式」を採用し、祝日や学校行事などの影響で教科の授業時間数が偏らないようにしている埼玉県杉戸町立杉戸中学校の実践を例に、その工夫を考える。

授業時間数の均一化が最大のメリット

 杉戸中学校では、「総合的な学習の時間」導入前から、時間割に「テープ方式」を採用している。「テープ方式」とは時間割の帯を作り、それを今日は1~6まで、明日は7~12まで、というように順番に充てていくという編成方法である(表2を参照)。月曜日の1時間目は国語、2時間目は社会…というように、1週間分の時間割がすべて決まっている従来の方法とは、まったく異なる方式のものだ。
 テープ方式の最大のメリットは、「休日や学校行事などによる授業時間の差をなくせる」という点にある。例えば、祝日にあたることの多い月曜日の教科時間数が極端に少なくなることもない。また、急に生徒総会を5、6時間目に行うことになった…というときにも、1~6までの時間割の予定を1~4までにし、翌日の時間割を5~10までにずらすことで、その時間の教科の授業を確保できる。
 「例えば、私は音楽の担当ですが、あるクラスの授業が朝1時間目に固定された場合、声が出なくて困ることがあります。しかし、この方式だと5時間目にも3時間目にもなりうるから、生徒の授業態度にも変化があっていいですよ」 とおっしゃるのは、同校の教務主任の吉田洋先生。この時間割は吉田先生がお1人で作成するそうだ。
 「基本は、『1教科を、6コマ以上間を空けて入れる』ことですね。わが校の場合は6時間授業の日が多いですから、同じ日に同じ教科が2回入らないように気をつければいいのです。コツとしては、週あたりの持ち時間数の多い教科から入れていくことかな。できるだけローテーションどおり均等に割り振り、すき間に時間数の少ない教科を入れる。あとは、帯の切り方によって6時間連続で授業、なんていう教員が出ないように気をつける。そういう原則を身につければ、編成は難しくはありません」(吉田先生)
 この方式の導入により、生徒や先生方に混乱は生じなかったのだろうか。
 「生徒側にはありませんでしたね。生徒は、『次は○○の授業』としか考えませんから。明日は何番から何番、と黒板に書いておくと、生徒はそれに合わせてマグネット式の時間割を貼り、それに合わせて教科連絡を行っている。先生方はそれに比べると、何曜日の何時間目は何組、というそれまでのような考えができないので、最初は少し戸惑ったかな。でも慣れればみんな平気です」(吉田先生)
 そして、この時間割のなかに「総合的な学習の時間」を導入することになったのだ。

2時間連続で「総合的な学習の時間」を確保

 杉戸中学校が「総合的な学習の時間」を導入したのは文部省の研究指定を受けた1997(平成9)年度。「年間70時間でお願いできないか」ということで、最初から年間70時間の確保が必要となったのだ。施設設備の問題から、集中方式ではなく週2時間で行うことに決まったが、現行の教育課程では、1年生だけは授業時間数の下限をとってもその時間を生み出すことができなかった。
 「まず、どこからその時間を生み出すかということを各教科で話し合いました。時間数を削りたくないのはどの教科も同じ。結局、総合的学習で必要なのは『表現力』だから、これを『総合的な学習の時間』で、学校全体で育てていこうということで、国語から時間をつくりました。もちろん国語科の先生方から反対もありましたよ。ただ、実際に導入してみると、ちゃんと表現力は身について、導入以前と同等のテスト問題でも平均点は下がらなかった。だから、先生方も納得してくれました」(吉田先生)
 また、同校では活動時間を確保するために週2時間の「総合的な学習の時間」を連続で確保しているが、この「連続」を守るのにも工夫がある。
 「前にも言ったように『テープ方式』ですから、5時間授業の日があると、5時間目と次の日の1時間目、というふうに分かれてしまう可能性があったのです。ですから、1日の授業時間は必ず偶数にするように時間割を組みました(表1参照)。奇数週の土曜日は2時間で終わり、偶数週はその2時間分を水曜日に移動させています。」(吉田先生)
 もちろん、現在の時間割になるまでにも試行錯誤はあった。例えば、99(平成11)年度には、25分授業と75分授業を組み合わせた時間割で行っていた。英語を25分間、そのあと技術家庭を75分というようにである。これは、いわゆる年間35時間で割り切れない教科、週0.5時間分の処理としても有効である。ただし、2000(平成12)年度では、奇数週と偶数週で2教科を交代で行うようなかたちを試してみている。
 「本校には1学年8クラスくらいあるので、使用できる教育機器などに限りがあります。だから、『総合的な学習の時間』を学年単位で確保するのは無理。そこで、縦割りの異学年構成で時間を確保しています。それぞれの学校が実情に合わせて編成していったらいいのではないでしょうか。それに、時間割編成はゲーム感覚を忘れずに行いたいですね」
と吉田先生は締めくくった。

表2 ●テープ方式の時間割(抜粋)
生徒側の時間割 EL=ふるさとEnjoy Learning(総合的な学習の時間)
担任 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
1-1 A先生 EL1 EL1 英体
1-2 B先生 英体 EL5 EL5
1-3 C先生 英体 EL4 EL4
教師側の時間割 英語と保健体育を隔週で実施 太字=隔週で担当するクラス
氏名 教科 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
1-1 A先生 1-1 1-2 1-8   1-5   1-1   1-2 1-8 1-5   1-1   1-8 1-2 1-5     EL5 EL5 1-1 選1 1-2   1-8 1-5  
1-2 B先生 1-2   1-5 1-7 選3A   1-6 1-1   1-2 選2   1-8   1-4 1-7 1-6   1-8 1-4 1-4 1-3 選1       1-5 1-3
1-3 C先生   1-5     1-7 1-3 1-1 1-5   1-7 1-1 1-3 1-5   1-7 1-3 1-1 EL5 EL5 1-5   1-1 1-3   1-7 EL7 EL7

 

  埼玉県北葛飾郡杉戸町立杉戸中学校
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  埼玉県北葛飾郡杉戸町内田1-5-35
  tel 0480-32-0132
  校長/岡野一雄先生

   

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