第4回 保護者との連携
「学習者」として保護者を巻き込む「コースサポーター制度」!
「総合的な学習の時間」(以下、「総合的学習」)では、生徒たちの多様なニーズにいかに対応するかという点も大きなポイント。しかし、生徒が個別的な課題に取り組んでいる際には、教員だけではそれが時間的・内容的に難しくなることもある。そこで注目されるのが、保護者の協力やサポートだ。熊本大学教育学部附属中学校では、学校外の連携、特に保護者との連携として「コースサポーター制度」を導入している。保護者をどのようにして「総合的学習」に巻き込んでいったのか、その工夫を探る。
「総合的学習」では、校外での学習の機会やグループ学習・個別学習の機会が増えてくる。外部への引率はもちろん、取材のアポイントメントを取ったり、活動全体のコーディネートをするなど、教師にも新しい役割が求められる。それらの役割を果たすうえで、保護者のアドバイスや協力は教師にとっても大きな力となる。そこで、「保護者の方にも学習を支援していただき、また、ともに学んでもらう」という趣旨から、「コースサポーター制度」というシステムで保護者との連携を図っている熊本大学教育学部附属中学校を例に、その連携のあり方を考えてみたい。
教育課程全体を理解してもらう機会をつくる
同校ではまず、「総合的学習」の趣旨や内容、また、教育課程のなかでの位置づけなどを、保護者に理解してもらうところから始めた。自分たちが経験した学習ではないため、「総合的学習」そのものについて、イメージしづらい保護者もいる。そこでまず「総合的学習」について、また教育課程全体について、保護者と共通理解を持つようにしている。PTAの会議や学級懇談会などで、折にふれて説明を行うことを、連携の第一歩とした。
アンケートで「学びへの関心」を把握し、全体のプランを練る
新年度、コースを立ち上げる前には、生徒と保護者の両方からアンケートを取る。
「保護者の方々に自分の興味・関心のあるコースに参加してもらおうということなんです。つまり、一緒に学びながら手助けをしてもらうというわけです」
と話すのは、同校研究部の原田尚孝先生。
アンケートでは、国際理解だったらどんな内容に興味を持っているか、福祉ならばどういうことを扱ってほしいか、というような学習のテーマにかかわることをきいている。その結果を踏まえて、「総合的学習」全体のプランをつくり上げる。
「子どもや保護者の興味・関心も取り入れながらプランをつくっているので、『こういうコースをつくりましたからいらっしゃいませんか』と呼びかけたときに、わりと受け入れられやすいのではないかという感じがします」(原田先生)
そのプランが確定すると、年度の初めに全保護者に「コースサポーター募集の呼びかけ」を配布する。保護者は、参加したいコースに印をつけて応募すればいいのだ。
コース全体の流れを説明し、力を借りたい場面を具体的に提示する
コース別に希望者を調整し、決定後、各コース担当教員がコンタクトを取る。
「年度初めに、コースサポーターの方に来ていただいて、今年はこういうことをしますという会議を持ちます。年間計画に基づいて、だいたいこの時期にこんなことをします…例えば国際交流で留学生を呼びたいとか、校外へ取材に行く生徒が出てくるはずだとか説明し、人手が要りそうなところはあらかじめ協力をお願いしておきます。できるだけ具体的にです」(原田先生)
それ以外の通常の授業は、自由に参観してもらう。コースサポーターとの連携から、新たな学習の場が生まれてくることもある。
「私が担当した例でいうと、ユニセフの活動のなかの地雷除去や児童労働の禁止といった問題について学ぶコースで、例えばユニセフの人の話が直接聞ければいいなというときに、コースサポーターの方を通じて連絡をとっていただき、学校に来てもらって話を聞くことができました。
また、福祉のコースでは、コースサポーターの方の1人が実際に福祉の現場で働いていらして、実習のようなかたちで夏休みに受け入れていただいたこともあります」
「学習者」として参加してもらいながら「学外の目」でコースを見てもらう
各コースには、だいたい3名から4名ほどのコースサポーターがいる。
「保護者にとっては、『何か手伝いができる』ということとともに、『自分も一緒に勉強できる』というところがポイントのようですね。子どもは、国際理解や科学技術などへの興味・関心が比較的高いんですが、保護者の方々は福祉に関心が強いんです。それはご自身が直面している身近で切実な問題でもあるかと思うんですけど、それを子どもにも勉強してほしいという気持ちがおありだったりするのでしょうね。
それから社会全体で『総合的学習』への関心が高くなっているので、どういう学習なのか自分も実際にやってみようかなという方が増えているのだと思います。
子どもたちは、コースサポーターといってもあまりピンときていないかもしれません。でも、きちんと紹介しますし、名札もつけていますから、手伝ってくれる人、一緒に勉強する人という認識はあると思います。例えば中間発表の時などに感想を言ってもらうと、教師とは違った視点で話をしてもらえますから、そういう意味では刺激になると思いますね」(原田先生)
コースサポーターとしてお願いする範囲を明確にするのが課題
昨年度の反省として、この制度をもっと有効に活用する可能性や、改善の余地があるということが挙げられるという。
「去年はコースサポーターの方から注文がありました。『もっと自分たちを活用してくれ』と(笑)。『こんなものじゃ満足できない。もっと使ってほしい、先生、遠慮したんじゃないですか』という声でした」(原田先生)
しかし、具体的にどんな内容をどこまでお願いするかは、まだ試行錯誤の段階である。
「どこまでお任せしていいのか、というような模索の時期は必要だと思いますし、年を経るにしたがって、ここまでお願いしてもいいんだというところがつかめてくると思います」
と原田先生は言う。「コースサポーター制度」の可能性は、まだまだ広がりそうである。
(文 小西慶太/資料提供 同校)
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