ベネッセ教育総合研究所 進研ニュース
2002.07
総合的学習の手法
ステップアップの工夫とヒント

第5回 コンピュータ使用上のガイドライン作成・運用

自主規制できる環境づくりで、生徒の主体的な活動を促す

 

学校現場へのコンピュータ導入が進むにつれ、ネチケット″(インターネットの世界において利用者が守るべきモラルやマナー)や学校設備であるコンピュータを使うときのルール″をどのように指導するかが問題になってくる。そこで、これを解決するために学内で「コンピュータ使用上のガイドライン」を作成・運用している茨城県笠間市立笠間中学校を例に、子どもたち自らが規制をしていけるような環境をどのようにつくるのかについて、同校の菅谷政雄先生、石塚芳之先生にお話をうかがった。

 情報を発信するだけでなく、発信した情報を「守る」という姿勢を見せる

 笠間中のコンピュータ教育は、1995(平成7)年度、通産省・文部省選定の「100校プロジェクト」に参加したころから進められてきた。学校ホームページ(以下HP)作成などを通して情報を「発信」するという第1段階の取り組みを終え、次に何をするかということを考えたときに、「発信した情報をどのように守るか」が話題になったという。もちろんそれまでも、コンピュータ使用の際のマナーやルールについては口頭で指導をしてきた。しかし、生徒が今後ますますコンピュータを使用するようになることを考えると、コンピュータ使用上のガイドライン(指針)をきちんと明文化することが必要なのでは、という結論に達したのだという。しかし、その先例は乏しく、他校の先生を含めて研究が進められ、やがて、早稲田大学が公開しているいくつかのガイドラインの存在を知り、これをもとに「中学生向けのガイドライン」をつくっていこうということになったという。

 中学生が「読めばわかる」ようなガイドラインをつくる

 作成の際に気をつけたのは、「中学生が読んでわかるもの」「説明がなくても読めば理解できるもの」にすること。あくまでも、生徒自身でそのつど確かめ、振り返りながら使用するものなので、そばに教師がいなくても利用できるものにしたいと考えたのだ。
 「入学してきたばかりの1年生でも理解できるように心がけたのだと思います。試案をつくって何度も検討したという話も聞いていますし」(菅谷先生)
 担当以外の先生方にとっては、「ガイドライン」という存在自体がなじみのないもの。案を提示すると、「こういうものがあるのか」「それなら導入してもいいのではないか」というように校内にも周知されていき、試行錯誤ののちに完成をみた(図版参照)。出来上がったガイドラインは学校HP上に公開され、生徒がいつでも確認できるようにしてある。

 使用する場面に則して「ガイドライン」を取り上げて適宜指導する

 笠間中には、コンピュータ室が2部屋あるが、インターネットに接続されているのは第2コンピュータ室の20台。クラスごとにローテーションを組んで、昼休みに順番に使用していく。
 「第1コンピュータ室ではゲームを使ってタイピングの練習、インターネットを使うのは第2コンピュータ室、というように2つに分けているのです。第2コンピュータ室に割り当てられたときには、インターネットを使用するときの約束など、担任がポイントをしぼって指導を行うようにしています。特に1年生にですね」(菅谷先生)
 一方、インターネット上の著作権などに関しては、3年生の技術の授業で指導している。
 「HPを作成するという授業のなかで、ガイドラインを使って説明をしています。テキスト引用時などは、作成者にメールで許可をいただくということを基本にしていますので、その際にメールの作法も見ていきます。具体的にはメールを校外の方に送る前に、教師が内容をチェックしますし、送る際には教師のほうにも同じものを送らせています」(菅谷先生)
 著作権の問題は教科(技術科)で、検索・閲覧に関しては担任で、というように役割分担をしながら指導をしているのだ。

 先生の目が行き届くように、コンピュータの配置にも気を配る

 ガイドラインにも明記されている通り、生徒が自由に検索・閲覧を行う際には、教師が必ず近くにいるようにしている。また、第2コンピュータ室はコンピュータをすべて壁際につけて、教室のどこからでも画面が見えるような配置にしてある。廊下にも1台、自由に使えるコンピュータが置いてあるが、こちらも先生の行き来があり、目に入る場所ということを意識している。
 「いわゆるフィルタですか、例えばアダルトサイトなどへのインターネットのアクセス制限を本校では使っていないのです。あくまでも生徒たちの自主的な規制に任せていますので、そういったコンピュータの配置からも緊張感を持たせる工夫をしています」(石塚先生)

 問題が起こったときは、子どもたちに投げかけて共に考える

 それでも、ガイドラインからはずれた検索をするなどの問題が、年に1、2度は必ずあるという。
 「そういうときにどう対応して、子どもたちにどう投げかけるかも重要なことではないかと思います。問題を投げかけることによって道徳心を養うのもねらいの一つです。学校HPの掲示板に不正な書き込みがあった場合などは、相手に正式に抗議したり削除したりを教師側でします。そして、生徒たちとまたそれについて考えていく…そういう流れになっています」(菅谷先生)

ガイドライン自体を常時見直し、作り直していく姿勢で

 ガイドラインの見直しは常時行う。問題が起こったときは話し合って改善していく。情報化のスピードは速く、すでにガイドライン作成当時にはなかった課題も出てきている。
 「最近子どもたちはチャット(文字によるリアルタイムのおしゃべり)をしたがりますよね。それに関するモラルは正直、今のガイドラインのなかにはないかなと思っています。『総合的な学習の時間』の導入でHPでの発信も多くなりますから、著作権や肖像権の部分ももう少し補足する必要があるかもしれません」
 菅谷先生の言葉に、石塚先生もうなずいた。時折、県内の小・中学校からの問い合わせなどもくるという。生徒に投げかけ、生徒と考えながら、同校のガイドラインは今後ますます充実していくのだろう。 

笠間中学校ホームページアドレス http://ed.city.kasama.ibaraki.jp/~kasamaj/

  茨城県笠間市立笠間中学校
  〒309-1611
  茨城県笠間市笠間2702番地
  tel 0296-72-0120
  校長/村上修身先生

   

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