ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
小・中連携したカリキュラムで学習意欲の向上を図る

静岡県富士市立 元吉原もとよしわら中学校
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ALT、JTE、HRT3者による指導
 ALT(外国人補助教員)のあとについて、生徒たちが人物の容貌や性格などの特徴を表現する英単語の発音を繰り返す。机や教科書、ノートはない。ALTが身振り手振りを交えて、説明を挟んでいく。JTE(日本人外国語担当教員)がその説明に加わる。HRT(学級担任)も参加する。会話練習、テーブルを出してカルタ取り形式のゲームと進む。授業中の会話は基本的にすべて英語だけで行う。ALTの話す英語は、多少はゆっくりだがほぼ自然な速さに近い。中学1年生がそんな生の英語をしっかりと受け止めている姿は、予想をはるかに超えるものだった。
 「ALTの1人は、小・中学校両方に勤務し、小学校で週3回、中学校で週2回授業を行っています。そのため、中学校に入学した生徒がスムーズに学習に取り組めます。中学生になってから英語を始めようとすると、どうしても抵抗感が出てしまうものなんですね」(JTEの山下美知子先生)
小~中の系統的なカリキュラム
 英会話科は英語の教科とは別枠。小学1年生から中学3年生までの9年間のカリキュラムは、系統表が基本になっている(下表参照)。およそ1か月を1ユニットとし、日常生活の身近な場面でよく使われる会話の題材を、それぞれの発達段階を考慮し、系統立てて作成している。
 小学1、2年生では、週1回、15分のモジュール方式で年間9、10時間。英語のリズムや発音に親しむため、チャンツや歌を中心に語彙の習得を目指す。
 小学3、4年生は週1回、年間35時間。ペアやグループで、学んだ言語材料を使ってのゲームやコミュニケーション活動を行う。
 小学5、6年生は週2回、年間70時間。中学校では年間35~55時間。この段階では、フォニックス(注)を取り入れて正確な発音を目指す。さらに、ハロウィーンなどの行事に合わせてパーティーなどを行い、体験を通して日本と外国の習慣の違いについて理解できるようにする。
 小学校での時間数を多くしたのは、九年間のなかでも初期の段階で英語にふれる機会を保障し、より英語に慣れ親しむことが英会話力を育成するうえで重要だと考えたため。子どもたちは普段の英語科の授業でも自然と英語がでてきたり、校内を歩いている先生に英語で話しかけたりする光景も見られるようになってきた。
 「カリキュラムを作成するにあたって、最初は教科書のなかでどんな会話が使われているか、日常生活でどんな会話が行われているかを取り出して割り振っていったのですが、それだけではスムーズにいかない。そこで、人が出会って、挨拶をして、仲良くなって、学校のことを話したり、家に招待したり、一緒に遊びに行ったり、買い物に出かけたり、パーティーをしたり、夢を語り合ったり…というストーリーを考えました。それが系統表の横軸です。同じストーリーが、次の学年になるとさらに深められていく。スパイラル状に発展していくというかたちです」(山下先生)
(注)発音とアルファベットの関係を教える教授法。
中学進学の不安を減らした
 小・中連携という取り組みは、広く子どもたちの心理面に変化をもたらした。研修主任の深澤修一先生はこう話す。
 「アンケートをとると、中学進学を前にした子どもたちの不安が減っているんです。特に新しく英語を学ぶことに対する不安が減ってきています」
 先生方の間にも、小・中それぞれのいい点を学んでいこうという意識が生まれ始めた。
 「まずは、教師側の小・中学校の子どもに対する意識のズレをなくしていくことが大切です。子どもの9年間の発達段階について共通認識を持つ、そして互いの学校のいいところを学び合う、そういったところから職員の意識が変わっていけばいい」(佐山校長先生)
 2003年度からは「総合的な学習の時間」の国際理解の枠組みのなかで、英会話科の取り組みを発展させる。
家族や友人の容貌や性格などの特徴を表現する会話練習。ALTからはその状況に応じた臨機応変なリアクション、ジョークも飛び出す。生徒たちはそんな生の英語に的確に反応する

夏休みなどを活用して、徒歩20分ほどのところにある元吉原小学校の先生と打ち合わせをしながら作成。子どもたちにアンケートをとって、関心の深い題材を取り入れた。この系統表に沿って毎時間のレッスンプランを作成し、それをもとにALTやHRTと打ち合わせを行う
 
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