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わくわく授業のアイデア

東京都多摩市立 落合中学校
大原ひろみ先生(理科担当)
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●学習意欲を高める理科の授業のコツ
このコーナーでは、生徒の意欲を高めるために先生方が授業のなかで工夫しているちょっとしたコツを紹介します。
 具体的なものから抽象的な概念へと大きくステップアップする中学校の理科は、本来、知的好奇心を大きく刺激するエキサイティングな教科のはずだ。ところが現実的には、そのステップアップでつまずいてしまい「理科嫌い」になってしまう生徒が少なくない。そんな生徒を1人でもなくそうと試みる大原先生の工夫を紹介しよう。
 「教科書を開いて読み始めたとたん、生徒は他の教科と同じパターンにはまって、理科が実際に自分の身の回りに起きていることを解決する教科という受け止め方でなく、義務をこなしている感覚になってしまいます。
 だから、授業でいちばん大切なのは、さまざまな工夫をして生徒の集中力を切らさないようにしながら、知的なものへの関心を引き出し、自分たちの力で解決する手応えを感じさせることです。例えば、科学者になってさらに追究していけるような『その先の世界』も、ちょっとのぞかせてあげる。ここまでわかればいいんだと限定してしまうのではなく、その先の可能性や現実の世界での広がりをきちんと見せていくんです」(大原先生)
コツ(1)生徒のつまずきが何かを見つけて、それを解きほぐすような教材を考える。
 例えば、抽象的な概念を実感を持って考えさせるための教材を用意する。化学反応式における粒子概念をイメージさせるためのオリジナル教材(写真①)では、まず原子の存在を説明したあとで、実際にこのビーズを自分の手で並べていく。H2Oなら、水素を2つと酸素を1つ使って、H2Oをつくる。でも、実は、これだけだと生徒は本当には実感していない。そこで、逆にどんどん難しい光合成の反応などをやっていく。生徒は数合わせのゲームのように必死になる。そんななかで生徒から、「これって植物がやってるの?」と問い掛けが出てくる。言葉として覚えていた光合成を、具体的なイメージと結びつけて実感し始める。この粒が現実として感じられてくる。そうすると、植物がまた違った生き物に見えてくる。そして、「世の中の物質すべてが、こういう粒子からつくられているんだ」という実感が生まれる。
化学反応式における粒子概念をイメージさせるための教材。アイロンビーズ(アクセサリーや人形を作る際にしようするパーツ)とフロッピーケースを利用した。実際に自分の手を使って並べていくことで、抽象概念を具体的にイメージする手助けとなる。頭のなかで記号を操作するだけでなく、現実の物質世界へと実感をつなげていくことが大事だ
コツ(2)プリントを次の展開が読めないようにして作り、推理小説のように謎を解いていく楽しさを感じられるようにする(B4判1枚のプリントを半分に切ってB5サイズにし、最初は半分だけ配るなど)。

コツ(3)プリントを作るときには、実際の授業のシミュレーションを頭のなかで何回も繰り返す。授業が単調にならないように、予想できない展開にしたり、飽きさせないように変化をつけていく。

コツ(4)導入実験で興味を引きつけても、すぐに解答を出さない。あえて答えのわからない欲求不満の状態にして、その後の授業で気づかせ、自分で解いた手応えを感じさせる。

コツ(5)授業後にレポートを書かせ、学習内容の定着度を確認する。授業の構成やストーリーづくり、次へのステップアップは、生徒の理解度を見ながら進めていく。

コツ(6)授業を進めるにあたって、ときには生徒を挑発して雰囲気を活性化する。
 例えば、誤答ももっともらしく説明し、生徒の考えを揺さぶる。すると、生徒は必死になって考える。最初に口惜しい思いをしたことで、きちんと理解していないと正解が出せないことがわかり、次に真剣に考えるというステップが生まれてくる。
コツ(7)実験について、どうしてそうなるのかを考えさせ、生徒たちのアイデアをどんどん出し合う場面をつくる。意外な生徒が意外なアイデアを出し、楽しく、活発な雰囲気になる。

コツ(8)アイデアがたくさん出るようにするためには、答えなくても授業が進行する状況はつくらないこと。
 例えば、だれでも答えられるような「○○が好きか嫌いか」という問い掛けや、正解を求める質問など、いろいろな問い掛けをし、生徒が常に反応し、考え、意見を言うことが当たり前という雰囲気をつくる。
コツ(9)今の子どもたちは基礎的な一般常識がない。ちょっとしたエピソードをふんだんに盛り込んでやると、いきいきと目を輝かせる。

コツ(10)テレビ番組の司会者の話術も参考になる。ちょっとした「間」の取り方などを授業で取り入れてみると、生徒を面白いように引きつけられる。
 授業では、生徒の目の輝きを常に見ることが大事。ちょっとした話材も効果的だ。
天体の単元で、太陽と地球の位置関係、時間によって自分のいる場所と天体の方角、見え方がどう変わるかという関係をつかむためのモデル。フィルムケース、発泡スチロールのボールなど、100円ショップで入手できるような材料で作られている。自分の手で模型を操作することで、3次元の関係が理解できるようになる
 
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