ベネッセ教育総合研究所
特集 変わる高校入試に中学校はどう向き合うか
金子武司

金子武司
ベネッセ教育総研
主任研究員

■調査概要
調査時期/2004年5月
調査対象/全国の都道府県・政令指定都市教育委員会
調査方法/郵送による自由記述式アンケート調査
回答数 26

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変わる高校入試に中学校はどう向き合うか
 ここ数年、全国的に多くの都道府県が高校入試制度の改革に乗り出している。
 また新教育課程の影響で、入試問題の出題意図や内容にも変化が表れているようだ。
 高校入試改革はどのような方向へと進んでいるのか。中学校ではどのような対策が求められるのか。最新のアンケート調査などをもとにして、これからの高校入試の姿を探る。


第1部 調査レポート
全国の都道府県教育委員会アンケートより
(1)高校入試の方向性を探る
―全国の教育委員会はこう考えている
 ベネッセ教育総研では2004年5月、全国の都道府県・政令指定都市の教育委員会に対して、高等学校入試制度を中心とした「中等教育改革に関する調査」を実施した。調査・分析に中心的に携わったベネッセ教育総研主任研究員の金子武司が、アンケートから明らかになった高校入試の傾向を語る。
Chapter1 入試制度改革の中身
学区緩和や受験機会の複数化など生徒の選択肢が広がった

学区の撤廃・緩和で、学校の特色化が進む
 ここ数年の高校入試制度改革の特徴の一つは、生徒が入学を志望できる地域の範囲を定めた学区の撤廃や緩和でしょう。これまでも、専門学科については全県1学区にしている県がほとんどでしたが、これを普通科についても全県1学区にしたり(学区撤廃)、学区数の減少や学区を越えた受験の条件を緩和したり(学区緩和)というように、中学生が受験できる地域(高校選択)を広げた県がとても目立ちます。アンケートでも「学区撤廃にとても力を入れてきた」が19.2%、「学区緩和にとても力を入れてきた」が38.5%という結果が出ました。
図表
▲「社会の求める人材像」が変化し、それにともなう学校教育への要請もあり、高校入試に関しても、ここ数年、(1)学区の再編(2)選抜方法の多様化(3)入試問題内容などの大きな変化が起こってきている。
 ご存知のように、これまでいくつかの県では総合選抜制度を実施してきました。これは高校の序列化・受験の過熱化をなくすことが大きな目的だったのですが、学校ごとの特色が打ち出しにくい、生徒の学力差が大きいため、個々の生徒の学力を伸ばすのに指導の工夫が必要といった課題もありました。首都圏では、大学進学を志望する生徒が私立高校へと流れる傾向も顕著です。
 総合選抜制度を廃止し、さらに学区を撤廃または緩和することは、生徒が自分の興味・関心や適性に合った高校を受験できるようにするための選択肢を広げるとともに、各学校の特色に合致した生徒が広く集まることを意図しているのだと思われます。
 選択肢が広がる分、各学校が特色を強く打ち出すことも重要になってきます。学区の再編により、大学の進学実績が際立つ学校が生まれるケースも出てきます。「難関大学への合格者の増加に、今後力を入れていくか」という質問項目に対して、57.7%の教育委員会が「とても」または「やや」力を入れていくと答えており、学区再編もこの意向を踏まえた一つの施策ともいえるのではないでしょうか。
 一方、現在の高校が抱えているもう一つの課題が、高校に入学したものの、学校生活への不適応や学業不適応を起こす生徒への対応です。高校としては、生徒の興味・関心に合わせた多様で個性的な教育を用意する必要に迫られています。アンケートからもわかるように、総合学科、単位制、専門学科の新増設に力を入れている県が多いのは、その一つの表れといえるでしょう(図2)。
図表
図表


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