ベネッセ教育総合研究所
米野岳中学校
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地域の「支持的風土」が生徒の自立心を育む
 2年前に都田校長が赴任した当時、学校は落ち着かない状態にあった。
 「ずんだれとる(だらしない)というか、頭髪や服装が乱れていて、先生の指導を生徒が聞き流すような雰囲気がありました。何より問題なのが、『真面目な生徒が生かされていない』ということ。これはなんとかせねばと思いました」
 そこで、何よりも地域の子は地域で育てるという「支持的風土」を育てることが大事であると考えた。その象徴的な出来事が、校則の改訂だった。
 当時、「頭髪は丸刈り」という校則があった。一部からそれに異議を唱える声が上がり、校則を見直すことになった。
 まず、校則をプリントして、すべての家庭に配り、どのように修正すればいいかを家族で話し合って、赤で訂正してもらう。それを集約した結果をもとに、生活委員会と生徒会役員で改訂の原案を作成し、各学級に持ち帰って話し合う。その後、生徒代表、保護者代表、教職員代表で構成する検討委員会で話し合い、もう一度各学級に戻し、さらに検討委員会で検討。校長に提出。それを手直しして、翌年度から新しい校則が実施された。
 ここで注目されるのは、行動の主体を生徒におきながら、家庭、地域、教師のすべてがコミュニケーションをとって進めていった点だ。
 煩雑に思えるが、「自分たちの力で校則を変えた」経験は生徒たちに自信を育み、教師、家庭、地域を含めた学校全体に一体感を生んだ。そこから、「自分のためだけでなく、周りを含めた全体のため」という“支持的風土”が育ってきた。
 この件に代表されるように、都田校長が就任以来目標としてきた、「地域、学校を支持的風土に」変えるための取り組みが土台にあるからこそ、同校の場合には、調査結果を生かせているのだ。
 改善に向けて動き出した成果は、「学習集団形成度調査」の結果にも表れてきており、確実に「学級集団」から「学習集団」へと変わってきている。学習面でもさまざまな新しい試みが可能になった。今年度からは、基礎学力養成のための「サンシャインテスト」(図4)にも、朝学習で取り組み始めた。
図表
▲図4 サンシャインテスト。1枚の紙を3教科で使う
サンシャインテスト
 2004年度から始まった全校一斉の朝学習でのテスト。週1度、木曜の朝に20分間、行われている。  各学年別に、英語・数学・国語の基礎的な内容に絞って作成(図4)。各教科1問間違いまでは合格で、それに達しなかった教科は、その日の6時間目の選択教科の時間に個別指導を受けたり、何回もやり直しをしたりして補充深化の学習をし、放課後の再テストに臨む。それでも不合格の場合は再度個別指導を受け、合格するまで再テストに取り組む。このことで、基礎学力の徹底を図る。

●実施のポイント
1.3教科を1枚のプリントに
 当初は1回に1教科ずつ実施する予定だったが、回数を確保するため、各教科のスペースをあらかじめ決めておいて、各教科で問題を作成し、まとめて実施する。
2.生徒とのコミュニケーション手段に
 全校一斉に実施しているため、部活などで「今日のサンシャインどうだった?」などと声をかけられる。学習意欲喚起にも役立つ。
 「個に応じた指導」というと、個々の「学力」に応じることに目がいきがちだ。しかし、校則の改訂に象徴される支持的風土の醸成、とりわけ一人ひとりの生徒への心配りが、生徒のやる気を生み出す「学習集団」をつくり、それが学力向上にもつながる。
 米野岳中の生徒たちのさわやかで力強いあいさつの声が、それを何よりも物語っていた。


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