ベネッセ教育総合研究所
森本浩一氏にきく"
森本浩一
文部科学省 生涯学習政策局参事官(学習情報政策担当)
森本浩一

もりもと・こういち●1982年科学技術庁(当時)入庁。経済協力開発機構(OECD)事務局(パリ)派遣、計算科学技術研究企画官、在米日本大使館科学技術担当参事官などを経て、2004年4月より現職。
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ITは「教育の構造改革」推進に重要な役割を果たす
 本誌連載「e授業のある風景」でもお伝えしているように、教育現場ではIT環境の整備が進み、授業でのIT活用も広がりつつある。IT重点化政策のなか、「教育の情報化」を推進する文部科学省生涯学習政策局参事官の森本浩一氏に、今年度新たに始まった教育用コンテンツ活用支援策などについてうかがった。


「ITを活用して指導できる教員」
高い県は92%、低い県は48%
――まず、文部科学省が推進している「教育の情報化」の概要について教えてください。
森本 2001年に施行された「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)」を出発点に、教育に限らず各分野で「日本が世界最先端のIT国家になる」ための取り組みが始まり、現在は、04年6月に内閣のIT戦略本部から発表された「e-Japan重点計画2004」(注1)の実現に向けて動いています。

注1 2005年までに日本が世界最先端のIT国家になることを目指した「e-Japan戦略」の目標達成を確実にするため、加速すべき5分野等を定めた計画。

 文部科学省はこのうち、重点政策5分野の一つ「人材・教育」を担っており、そのなかで初等中等教育分野に関しては六つの施策を立てて、05年に向けた具体的な数値目標を掲げ、実現を目指しています()。
図表
 現在の課題は、地域格差です。
 例えば校内ネットワークを整備している学校の割合は、00年度の8.3%から03年度には37.2%に上昇しましたが、05年度までに100%にするという目標達成には開きがあります。そして、「ITを活用して指導できる教員」の割合を都道府県別に見ると、最も高い沖縄と最も低い高知とでは40ポイント以上も開きがあります()。
図表
――どうして格差が生まれるのでしょうか。
森本 IT環境整備の財源は、地方交付税交付金が充てられています。さまざまな事情で、自治体によってはそこに重点をおいた予算化をしていないため、他の用途に使われてしまうところも多い。各自治体のITや教育に対する施策の違いが格差を生むのです。大切なのは、各自治体・教育委員会が、実施すべきことを見極め、優先順位をつけることです。
 自治体の意識を高めるためには、目を外に向けることが大切で、ここにご紹介した都道府県別のデータのほか、諸外国との比較データも参考になります。これを見れば、韓国、シンガポールなどと比べて、日本が遅れていることが明らかです。こうした「国」のレベルでの危機感を各自治体でも共有してもらうことが、改善につながると思っています。


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