新入生説明会から始まる学習指導と生活指導 |
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毎年2月、府中第三中学校では、4月に入学してくる生徒を対象とした「新入生説明会」を実施している。説明会自体はどこの中学校でも行われているが、同校の取り組みが他校と異なるのは、説明会の場で春休みの宿題を出していることだ。教科は国語と算数、そして作文。また宿題と一緒に「学習マラソン記録表」(図1)を渡し、3月初めから春休みにかけて、国語、算数、理科、社会の各教科を毎日どれぐらい勉強したかを記録するよう指導している。記録表は入学時に提出させ、担任の先生がチェック。こうして入学前から家庭学習の記録をつけることで、学習習慣の形成に大きな効果がある。 |
▼図1 学習マラソン記録表。 中1・1学期からは記録を担任が毎日チェックするので、生徒は 「毎日先生から見られているから勉強しなければ」という意識が働くようだ |
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さらに特徴的なのは、生活指導もこの時点から始めていることだ。説明会には府中第三中学校に進学する四つの小学校から子どもたちが参加する。初対面ということもあって、落ち着かない雰囲気になり、きちんと並ぶことができない。そこで、列のつくり方やお辞儀の仕方についてもしっかりと指導している。新入生説明会は、まだ小学生気分の子どもたちに、中学生になる自覚を促す場になっているわけだ。
「保護者からは、『まだ中学生にならない子どもに、なぜ中学校が家庭学習時間を記録させたりするのか』という疑問が寄せられることもあります。しかしこれは強制ではなく、子どもたちに学習面での自己管理ができるようになってもらうためのものだと説明して、理解してもらっています」(土田伸栄教頭)(※) |
※土田先生は、取材時教頭でしたが、04年11月に目黒区立目黒第六中学校校長として異動されました。 |
府中第三中学校が初期指導に力を注ぐきっかけは、5~6年前に、「学校の荒れ」に直面したことがあったからだ。当時は他校生や卒業生がオートバイで校庭に乗りつける事件が起きたり、学年によっては授業がほとんど成り立たないケースもあったという。2学年主任の高橋芳宏先生が府中第三中学校に赴任したのは、ちょうどその時期だ。
「荒れている生徒を見ると、学力面と生活面の両方に問題を抱えている場合がほとんどです。つまり学力がついてないから勉強をしなくなり、生活が乱れる。あるいは生活リズムが確立されていないから勉強しなくなり、学力が身につかなくなる。荒れを克服するには、学習習慣と生活習慣の確立が両輪で必要になります。ですから新入生説明会でも、学習マラソンなどの学習指導と同時に生活指導もスタートさせているのです」(高橋先生)
さらに渋谷政夫校長は、入学段階で学習習慣と生活習慣を身につけさせる必要性を次のように説明する。
「かつての中学校の荒れは、中2がピークだといわれていました。しかしいまは、『小学校でも学級崩壊』という報道がある時代ですから、中1からでも荒れは始まります。また学習面にしても、小学校の授業とのギャップを感じて授業に乗り遅れてしまう生徒が、毎年必ず出てきます。生徒が落ち着いて勉強や中学校生活に取り組める環境をつくり出すためには、中1の1学期の初期指導が、非常に重要になっています」 |