ベネッセ教育総合研究所
特集 小・中の壁を超える中1・1学期の指導 とは?
赤池中学校データ
 赤池町は、福岡県中部に位置する人口約1万人の町。400年の伝統を持つ上野焼が有名。1970年に最後の炭坑が閉山するまでは、石炭の町として繁栄した。なお2006年3月に、金田町、方城町と合併して福智町になる予定だ。赤池中学校は、町内にあるただ1つの中学校。「生徒指導の視点に立った授業づくり」というテーマのもとに、「わかる授業」「楽しい授業」の実現に力を入れており、研究授業なども積極的に行っている。
〒822-1103
福岡県田川郡赤池町大字市場336
TEL 0947-28-2117
FAX 0947-28-5446
校長/鍋藤聖一先生
生徒数/319人、
学級数/10学級
鍋藤聖一
▲鍋藤聖一校長
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実践事例(2) 福岡県赤池町立赤池中学校
小・中連携と仲間づくりを重視した初期指導で
学校不適応を防ぐ
 赤池中学校は近年、不登校生徒の存在が大きな課題となっていた。そこで入学してくる生徒の小学校時代の状況を把握するため、小学校と連携し、きめ細かな指導を実現。また生徒がスムーズに中学校生活に溶け込めるように、学校行事などでの仲間づくりにも力を入れている。


不登校問題への対応は、小・中連続した指導が大切
 赤池中学校ではここ数年、生徒の不登校が教育課題として重くのしかかっていた。2000年度に不登校になった生徒は全校で40人、01年度は30人。赤池中学校の生徒数は300~350人程度だから、約10人に1人が不登校を経験していた割合になる。これは全国平均(37人に1人)を大きく上回る数値だった(図1)。
▼図1 赤池町の小・中学校3校の不登校の児童・生徒数の変化。
小・中の連携で、児童・生徒へのよりきめ細かい指導が可能になったことで、
不登校の数は小学校、中学校ともに大幅に減少した
図表
 鍋藤聖一校長が00年度に赤池中学校に赴任してきたときも、最大の課題は、やはり「深刻な事態になっている不登校問題にどのように対処していくか」だった。
「保護者や教員に話を聞いてみると、いまの子は仲間と関係を結んでいく力がとても弱いと言います。『○○さんなんて嫌いだ』と、たったひと言友だちから言われただけで友人関係が崩れ、学校に来られなくなるケースもあるようです。
 そのため、不登校問題を解決するためには、早い段階で生徒同士の人間関係づくり、仲間づくりをサポートしていくことがポイントになると考えました。それができれば、不登校のみならず、いじめや学校の荒れにも有効なはずです」
 赤池中学校研究主任の柴田徹先生は、不登校になる背景として、子どもたちの体験不足をあげる。都市部・地方にかかわらず、いまの子どもは集団で遊ぶ体験が乏しい。また、少子化できょうだいの数も少なくなった。それが、「よりよい人間関係を築く力の弱さ」につながっているのではないかと指摘するのだ。
 だがこうした根の深い問題は、中学校だけでは対処できない。
「不登校がいちばん多いのは、中1の1学期です。やはり人間関係でのつまずきが大きいようですね。入学直後の4月はなんとか我慢できても、集団にどうしても適応することができず、やがて学校に来られなくなってしまう。
 こうしたケースを防ぐには、生徒を中学校生活に早く慣れさせるための初期指導が重要になってくるのですが、中学校だけで対処するのは限界があるんです。というのは、不登校になる子どもをみると、すでに小学校段階でなんらかの兆候が現れている場合が少なくないのですね。それが、環境が大きく変化する中学校入学後に顕在化してくるのです。
 小学校のうちから、これまで以上に、人間関係づくり、仲間づくりに力を注いでいくことが求められています。さらには、中学校と小学校が連携して課題を共有し、一緒に問題に当たっていくことも大切ですね」(柴田先生)


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