ほかの生徒の意見に耳を傾け自分の考えを深めていく
|
|
教師同士のつながり、教師と生徒との信頼関係を取り戻した中央中学校が、現在力を注いでいるのが、生徒同士の集団づくりの力を高めていくことだ。生徒指導のキーワードが、「自己存在感」「自己決定」「共感的人間関係」という三つの視点だ。
「自己存在感」とは、自分が集団を構成する欠くことのできない一人であるという存在感を生徒に感じさせること。「自己決定」は、生徒に自ら考え決定する場面を与えること。そして「共感的人間関係」とは、教師と生徒、また生徒同士が、お互いの存在を認め合い、一緒に高め合っていける関係であることだ。中央中学校では、この三つの生活指導上の視点を全ての教科指導のなかで取り入れ、授業の中で実践している。
研究主任の真子靖弘先生による3年生の「公民」の授業では、ようやく発効にこぎつけた京都議定書を取り上げた。地球温暖化対策がなぜ遅々として進まないのか、授業当日の新聞記事を叩き台にしながら授業が進められていく(10ページ写真)。 |
|
▲写真 「公民」の「授業のようす。社会問題についても自分が知っている
ことを踏まえて自由に意見を述べる雰囲気がクラスに醸成されている。 |
「新聞記事を手がかりにすれば、どんな生徒でもそのテーマに対する自分の意見を述べることができます。つまり『自己存在感』を発揮することができる。またある生徒の意見に対しては、別の生徒を指名して、賛成や反対の意見を引き出していきます。これは自分の意見を述べるには、相手の言葉にきちんと耳を傾けなくてはいけないという『共感的人間関係』をつくり出すことをねらったものです。そして授業の締めくくりには『自己決定力』をつけさせるために、最終的な自分の意見をワークシートに書かせ、お互いに見せ合い、みんなの前で発表させています」(真子先生)
真子先生の授業は、教師の側から生徒に発問をし、その答えを元に展開していくというスタイルをとっている。この日の授業でいえば、「京都議定書がすでに発効していると思う人は?」という問いに数人の生徒が手を挙げた。「なぜ?」と真子先生が聞くと、「低公害車などの環境にやさしい車が売られているから」とある生徒が答える。一方で「京都議定書はまだ発効されていないと思う」と答えた生徒に理由を聞いてみると、「新聞やテレビで、発効後のようすが全然報道されていないから」という返事が返ってきた。そこから1997年に採択された京都議定書の発効がなぜ遅れているか、その背景を説明していく。難しいテーマを取りあげるときにも、できる限り生徒が授業に参加しやすい雰囲気をつくる配慮をしているのだ。そのような授業のなかでお互いの意見を見せ合う場を保障し、話し合うことができるようにする。相手の意見を認め合う過程で学習集団づくりができるといった、授業のなかで生徒指導を行っているのだ。
また生徒の意見が対立したときには、ディスカッションが取り入れられることもある。生徒は、ほかの生徒の多様な発想や意見に刺激を受けながら、自分の考えを深めていくというわけだ。
「生徒には、反論を述べるときには客観的資料に基づいて発言するように指導しています。また相手の意見をバカにするような発言があったときには、授業を止めて真意を確認するようにしています。ですから議論が感情論に陥ることはほとんどありません」(真子先生)
|