いま、文部科学省が伝えたいこと 文部科学省初等中等教育局視学官 井上示恩氏にきく

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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学校と地域が連携して子どもを理数好きにするプロジェクトがスタート

――そうしたなかで、文部科学省としてはどのような施策を講じているのでしょうか。

井上 02年度に、技術革新や産業競争力強化を担う科学技術系人材の育成を目的とした「科学技術・理科大好きプラン」をスタートさせ、03~04年度に実施したのが、「理科大好きスクール事業」です。小・中学校167校を理科大好きスクールに指定して、観察・実験を重視した取り組みを行いました。児童・生徒の理科に対する知的好奇心や探究心を高め、実感を伴った理解を促すことがねらいです。

――事業の成果はありましたか。

井上 観察や実験、体験的な学習を通じ、理科好きの子どもが増えるという一定の成果はありました。
 ただし、理科の授業は、単に観察や実験を増やせばいいというわけではなく、子どもを理科好きにするための先生の指導力が重要となります。04年度までの取り組みは、実践のなかで得たノウハウを、教員間や学校間で共有していくシステムがなかったことが、反省点として出てきました。
 そこで05年度から始まった「理数大好きモデル地域事業」では、学校単位ではなく、地域単位で全国15地域を指定しました(注3)。教育委員会が軸となり、地域内の複数の小・中学校と、科学博物館や研究機関、大学、高校などが連携して、理数好きの児童・生徒を増やそうという試みです(図1)。

図1
 そうすることで、小・中学校間での情報共有ができます。また、地域にいる理数分野の専門家の力を得て、地域が一体となり児童・生徒の指導に当たることができます。

注3■理数大好きモデル地域事業
05年度よりスタートした文部科学省の事業。小・中学校で理数好きのすそ野を広げるための施策。詳しくは、文部科学省ホームページ参照。 http://www.mext.go.jp/

――事業によって得られたノウハウは、全国の小・中学校にはどのように還元されるのでしょうか。

井上 事業の対象になっていないほかの地域に、「モデル地域事業」の成果を伝えていく役割は、各都道府県の教育委員会が担います。全国レベルでの情報共有は、文部科学省と科学技術振興機構が、協力していくことになるでしょう。

――次期学習指導要領の改訂に向けての検討が行われる時期にさしかかっていると思います。「理数離れ」が指摘されるなかで、理数教科のカリキュラムについては、どのような見通しを持っていますか。

井上 各教科ごとの指針については、現在、中教審の各教科の専門部会で話し合われています。議論されているのは、算数・数学については、数量や図形に関する基礎的・基本的な知識や技能、数学的な見方や考え方、実生活との関連、算数的活動、数学的活動の楽しさです。理科については、基礎的・基本的な知識や概念、科学的に解釈・考察し、自分の考えをまとめ、表現するなどの科学的な見方や考え方、観察、実験を通して実感を伴った理解を促し、日常生活との関連を図り、知的好奇心や探究心をもって自然に親しみ関心を高める、といった点です。
 ただ、実際に実践していくのは現場の先生方です。先生方の指導力向上のために、文部科学省としては「理数大好きモデル地域事業」などで得た成果を先生方に提供していくなど、より手厚い支援が重要になります。
 子どもたちの「知離れ」を食い止めるためには、何よりも現場の先生方が大きな鍵を握っています。私たちも先生方を全力で支援したいと思っています。


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