いま、文部科学省が伝えたいこと 文部科学省初等中等教育局長 銭谷眞美氏に聞く

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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全国学力調査を学力把握と授業改善に役立ててほしい

―文部科学省では現在、全国学力調査の実施を計画していると聞いています。この概要とねらいを教えてください。

銭谷 全国学力調査は07年から実施する予定です。06年度の概算要求では、その準備のための予算を確保しました。学力調査の対象学年は小学6年生と中学3年生、教科は国語と算数・数学です。希望する学校はすべて参加できるようにしたいと考えています。
  現在、「専門家会議」を開催して、具体的な実施方法等について検討しています。
  この調査の目的は、二つあります。一つは、各教科の到達目標に対して、子どもたちがどのような力をつけているのか、全国的な状況を把握することです。もう一つは、参加した学校が児童・生徒の客観的な学力を把握し、今後の指導に生かせるということです。テストの結果は学校にお返ししたいと考えています。指導計画の見直しや改善に生かしてほしいですね。

―調査する観点には、PISA(注1)的な学力の計測も盛り込まれますか?

銭谷 調査する内容は、各教科の目標や内容に照らして、子どもたちにどのような力がついているのかが基本になります。また、複数の教科にまたがったり、教科内容を「統合化」したPISAのような内容が入ったりしてもおかしくないですね。基礎・基本の知識や技能等が「生きた働く力」としてどの程度身についているかを計測する問題も必要です。
  学力調査の実施は、学校間の競争をあおることにつながるのではないかと不安視する声がありますが、それは文部科学省の本意ではありません。専門家会議で議論を重ね、学校間の過度な競争にならないような仕組みをつくっていきたいと考えています。目的はあくまでも、児童・生徒の学力を把握することで指導改善に結びつけること。現場の先生方にとって役立つものにしていきたいですね。
  また、学力調査を含め、学校が教育の質を向上していくために、具体的な目標を設定し、その取り組みを絶えず評価していくことが重要です。文部科学省としては、学校評価のガイドラインを05年度中に示す予定です。その際大事なのは、学校評価が学力だけの評価であってはならないということです。学校活動は多岐に渡っているため、学校教育活動全体を評価するようにしていく必要があります。

注1■PISA(OECDの生徒の学習到達度調査)の概要
15歳児を対象にし、2003年度は、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシー、問題解決能力の4分野を調査した


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