小学校では学級崩壊、中学校では校内暴力――。2000年ごろ、愛知県東海市内の小・中学校は混乱に陥っていた。学習への意欲や興味、更には体力や運動能力も低下し、子どもたちは活力を失っていた。
そんな危機的状況からの脱却を目指し、市教委は数々の施策を打ち出してきた。PTA会長を中心とした「おやじの会」の設立、若手教師の勉強会の開催、中学校区単位での研究指定など、教職員だけでなく、保護者や地域、関係機関にも積極的に協力を求めていった。
中でも、市独自の予算を計上して、指導主事や青少年センター所属の社会教育主事を増員することには力を入れた。スタッフが学校現場へ足繁く通うことで、互いの連携を深めるためだ。
一連の施策の背景にある思いを、深谷孟延(たけのぶ)教育長は次のように語る。
「まずは、学校を地域全体で支える環境を築くことが先決と考えました。なぜなら、子どもの成長にとって不可欠なのは、地域や保護者、伝統に支えられた『文化的環境』だからです。これが確立しないうちは教育改革はおぼつかないのです」
こうした思いがあるだけに、同市の学校教育にかかわる施策には「二学期制」や「少人数授業」といった、よく目にする用語はない。あるのは、授業改革への徹底したこだわりだ。
「学校が地域の信頼を得るために、最も大切にしなければならないのは、しっかりとした授業を成立させることです。教育改革は、授業が変わらない限り始まらないのです。二学期制や少人数授業は、授業改革のあとでよいと考えています」(深谷教育長) |