第1部 これからの学力調査を考える 学力調査を教育改革の起爆剤に

梶田叡一

▲文部科学省「全国的な学力調査の実施方法等に関する専門家検討会議」座長
兵庫教育大学長

梶田叡一

Kajita Eiichi

 

1941年島根県生まれ。66年、京都大大学院文学研究科修士課程修了。大阪大教授、京都大教授、京都ノートルダム女子大学長などを経て、04年12月に兵庫教育大学長に就任。現在、文部科学省中央教育審議会委員も務める。著書に『絶対評価(目標準拠評価)とは何か』(小学館)、『基礎・基本の人間教育を』(金子書房)など

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学力調査を指導改善に生かす

第1部

これからの学力調査を考える

現在、多くの自治体や学校独自で実施されている学力調査。2007年度からは、国も全国規模の学力調査をスタートさせる。国による「全国的な学力調査」と、自治体や学校による学力調査のそれぞれの特徴をどのように生かせば、学力向上の取り組みに結び付けられるのか。梶田叡一・兵庫教育大学長、田中博之・大阪教育大助教授に話を聞いた。

図

学力調査を教育改革の起爆剤に

2007年度より、すべての国公立小・中学校を対象に「全国的な学力調査」を実施することが決まった。文部科学省「全国的な学力調査の実施方法等に関する専門家検討会議」の座長、梶田叡一・兵庫教育大学長に、その狙いや概要、結果の活用についてうかがった。

文部科学省「全国的な学力調査の実施方法等に関する専門家検討会議」座長
兵庫教育大学長
梶田叡一

教育の最低基準を測る全国的な学力調査

 なぜ、全国的な学力調査を導入するのかというと、それは近年の教育改革が「ナショナル・ミニマム(国による最低限の保障)」と「ローカル・オプティマム(地域ごとの最適状態の創出)」の両立という原則に向かっていることと関係しています。
  国は国民に対して最低限の教育を保障する役割に徹し、あとは地方自治体が主役となって地域性を生かした教育を展開するという考え方です。国が最低限の枠組みをつくり、その中身は地域に委ねる方向に進んでいるのです。
  では、国の果たすべき最低限の役割とは、具体的に何か。これには、大きく分けて三つが挙げられます。
  一つは、「学習指導要領」に代表される最低基準を設けることです。例えば、国内のどの地域でも、義務教育を修了すれば、最低限これだけの力は身に付くという基準です。
  次に、その最低限の基準を身に付けさせるために、校舎や教師、教科書、教材などを整備するための財政基盤を整えることです。これは、必ずしも国が直接お金を出すという意味ではありません。あくまでも、このための制度を整えるのが国の役割です。
  そして最後に、最低限の基準が実際に身に付いているかどうかチェックする役割です。この三つめの役割を担うのが今後実施していく「全国的な学力調査」です。学力調査はこうした枠組みの中にあるのです。

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