▲高口 努
Takaguchi Tsutomu
文部科学省初等中等教育局教育水準向上PT学力調査室長
2007年4月、いよいよ「全国学力・学習状況調査(全国的な学力調査)」が実施される。問題の内容や実施方法などについて、疑問や不安を抱く教師は多いだろう。現場の教師から小誌に寄せられた学力調査に関する疑問・質問について、文部科学省の高口努学力調査室長に答えていただいた。
Q.1 学力調査の実施から結果返却に至るまでのスケジュールを詳しく知りたいのですが。
A.1 2006年11月から12月にかけて、全国の小・中学校各94校を対象に予備調査を実施しました。その結果を踏まえて、学力調査の手順や時間割などをまとめた実施マニュアルを作成し、07年1月中に各校に配付する予定です。 本調査は4月24日に実施しますが、問題用紙は実施日の直前にお渡しします。これは、各校が問題用紙を保管する期間をできるだけ短くすることで、情報の漏えいを防ぐためです。 実施後すみやかに、出題内容や狙い、解答例、採点基準、指導のポイントなどを整理した解説資料を配付しますので、指導に活用してください。調査結果の返却は、現時点では9月ごろを予定しています。
Q.2 本調査に先行して、予備調査が行われましたが、予備調査を受けた学校が有利になることはありませんか。
A.2 もとよりこの調査は得点を競うものではありませんが、予備調査を受けたのは06年度の小6生および中3生です。07年度に本調査を受ける児童・生徒とは学年が異なるので有利になることはありません。 もちろん予備調査と本調査では、全く異なる問題が出されます。
Q.3 出題範囲、および問題形式を知りたいのですが。
A.3 小・中学校共に、前学年までの履修内容が出題範囲となります。特に、小学校は小5、中学校は中2で学んだ内容からの出題が多くなります。 問題形式は、選択式に加え、一定の割合で記述式が含まれます。
Q.4 この調査ではどのような「学力」を測ろうとしているのですか。また、「活用」にあたる問題は、学習指導要領に準拠した内容となるのでしょうか。
A.4 学力調査の問題は、「知識」と「活用」に大別されます。これらはそれぞれ、学習指導要領が掲げる「基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着」、および「自ら学び自ら考える力の育成」に対応しています。知識、そして活用を問う問題のいずれも、学習指導要領から逸脱することはありません。 また、最近は「PISAのような問題は出ますか」という質問をいただくことがあります。PISAは、主として、習得した知識や技能をいかに実生活に生かすかを問う調査です。 その中には、当然、学習指導要領と重なる内容がありますから、本調査においても活用を問う問題として、PISA型の問題が出されることもあるでしょう。それでも、あくまでも学習指導要領の範囲内とお考えください。
Q.5 学力調査を行う意義はわかりますが、授業時数が減ってしまうのが心配です。
A.5 学力調査実施には、国語と算数・数学を合わせて、小6生は3単位時間、中3生は4単位時間程度を充てる予定です。 確かに、その分の授業を行う時間は減りますが、学力調査の狙いは、各校の課題を把握し、授業や教材の研究・改善に結び付けることです。それによって指導が改善されれば、結果として学校全体にとってプラスになるものと考えています。