教える現場 育てる言葉

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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「感動」に人が進化する原点がある

 自らの競技生活を、高野さんは「私にはほかに選択肢はないという気持ちがあった」と振り返る。
 「400メートルは苦しい種目です。ただ、私が持つすべての力を充填して、残らず放出できるのは、これしかないと思っていました。自分のポテンシャルを一番引き出してくれて、自分自身が有能であると思えるものが400メートルだったのです」
 一流の選手は「自分がやることはこれしかない」と信じている。だから悩まない。学生の中にはオリンピックを目指したいと思っている選手もいれば、将来は指導者になりたいと考えている選手もいる。何を目指すにしても、「自分にはこれしかないという気持ちで、そこに最高の情熱、アイデア、興味――自分の持てるものすべてを注ぐことが大事です」と高野さんは助言する。
 最近、高野さんは大学教員、陸上コーチ以外にも幅広い顔を見せている。2年前、アスリートの自立を支援するアスレティクス・ジャパン株式会社(旧社名・ラスポート株式会社)を設立、厚木市にコミュニケーションレストラン「Lap Time(ラップタイム)」をオープンさせた。この店では教え子の選手も働いている。「食のサービスは相手の気持ちを考えることが基本。自分の走りで他人を感激させるのは一流選手の要件です。接客を通していかにお客様に感動してもらうかを学びながら成長してほしい」と語る。
 人も動物も「速く走る」のは本能だ。ただ、人間の場合、そこには感動を求める。「本能的なものとそうでないものの両方を持って走るのは人間だけです。実に興味深い」と、高野さんはいう。「そこに人が進化する原点があるような気がする」というのが、彼の考えだ。これも走りを通して後進に伝えたい大切なことの一つなのだ。
写真
高野さんが指導する東海大学陸上部の練習風景

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