VIEW21 2000.9  特集 危ぶまれる生徒の学力

★データで見る「学力低下」の実態★
基礎の定着が悪く、低下傾向はトップ層にも


図2 数学基礎学力テスト平均点 多くの教師が、生徒の「学力低下」を実感している。次は、データにも生徒の「学力低下」が現れているのかどうかを見ていきたい。

数学力は明らかに低下

 図2は、東京大工学部で、'81年から不定期に実施されてきた数学の基礎学力を調べるテストの結果だ。問題は同一のものが使われており、採点基準も変わっていない。この結果から、日本のトップ層の学力の低下が見て取れる。



表1 低学年における学力変動 表1は、弊社が実施した、'96から'99年度の「スタディーサポート」1年生第1回の結果を比較、分析したものだ。
 これを見ると、「数と式」の〈式の計算〉設問2はあまり変化は見られない。だが、設問1は'96年度の正解率が低くなっており、生徒は括弧の内と外という指数の位置の違いに混乱したようだ。
 正解率の低下が顕著なのは、「方程式と不等式」。設問3は、整数のみと分数が含まれるという差異はあるが、低下の割合は差異以上に大きいと言える。難易度がほとんど変化していない設問4は、明らかに正解率が低くなった。
 「関数」は、設問6の〈関数とグラフ〉で若干正解率が上昇しているが、ほかの設問5、7は若干低下傾向にある。総合的に見て「関数」の基本は理解されているようだ。だが、「数と式」「方程式と不等式」の結果から、2次関数の数値計算に関しては不安が残る。
 以上の結果から、全体的に分数などが入ったときの計算力の低下、方程式、不等式の理解の低下が認められ、基礎学力は低下傾向にあると思われる。
 実際、教師が感じていた「計算力の低下」は、データでも同様の結果が出ている。他教科に関しても、教師の実感はかなり現状を正確に把握していると言えるのではないだろうか。



図3 数学・理科国際比較調査 学力水準は高いが
勉強は嫌いな生徒たち

 一方、「学力低下」を示していないと言われるデータも存在する(図3)。確かに日本の生徒の学力は世界のトップクラスにある。しかし、「算数、理科が好きか」という質問に対して、「大好き」と「好き」を合わせた数値は、小学4年の理科以外は平均より低い。特に、算数・数学は大きく下回っている。
 また、中学生の理科のテスト結果を問題形式別に見ると、選択肢と求答形式の平均正答率は国際的にも高い水準にあるが、論述形式に関してはトップの国に比べ13%も低く、順位も42か国中10位だった。暗記しただけでなく、覚えたことを自分の言葉で説明できて初めて、自分のものとしたと言える。日本の生徒の学力は剥(はく)落しやすい知識に支えられていると言えるだろう。



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