VIEW21 2000.12  特集 変貌する大学と入試

アクセスの良い駅前でコーディネート科目を開講

 「今後の課題は、各大学間のアクセスをどう改善できるかと、この制度を広く知ってもらうため広報をどのように行うか、という2点です」(百岳氏)
 参加大学が長崎県内の全大学となると、確かに大学間を移動するのには時間がかかる。解決策の一つとして、単位互換の対象授業はなるべく金曜日の4、5限目に設定することになった。そして二つ目は、各大学からの交通アクセスを考慮して、交通至便な駅前にサテライト教室を用意し、コーディネート科目を開講することにした。その授業は、1年目は長崎大、長崎県立大、県立長崎シーボルト大の3校がそれぞれ担当することになったが、その講義形態は少し変わっている。通常のように一人の教員が年間通して授業を行うのではない。担当教員も講義するが、それ以外に担当教員が依頼した他大学の教員も授業を行う。複数の教員によるオムニバス形式の講義だ。
 「まずは大学生が対象ですが、将来は社会人にも門戸を開いていきたいと思っています。学生も社会人もアクセスしやいサテライト教室での講義を通して、単位互換制度のことを広く知ってもらいたいですね」(百岳氏)

入試連絡会と入試問題への質疑応答で高大の連携を図る

 長崎県に見られるもう一つの動きとして、高大接続の取り組みが挙げられる。10月11日に県立長崎シーボルト大で行われた「両県立大学入試連絡会」は、長崎県立大と県立長崎シーボルト大側と高校の教員が意見交換をする場として、今年初めて設定された。このような場を待ち望んでいたという県立長崎シーボルト大の谷川榮彦学長は次のように語る。
 「今まで大学は、高校生に対してオープンキャンパスを開くなどしてきましたが、基本的には受け身の姿勢で構えていました。でも、これからはそれだけでは不十分と感じていました。入試やカリキュラムについて、もっと高校側からの意見が聞きたい、そしてこちらからの要望も伝えたいと思っていたんです」
 そのような思いから高校側へアプローチし、学事振興課の力添えと県高等学校進学指導研究協議会の積極的な協力により、入試連絡会の実施と入試問題に関する意見交換が行われることになった。
 まず行われたのが入試問題に関する意見交換。高校教員が両県立大の問題を分析、それに基づき大学側への入試問題に関する意見と要望が提出された。その回答が文書としてまとめられ、入試連絡会当日に配られた。高校側から問題の難易や量、受験生の解答状況などに関する質問が投げかけられ、大学側が出題意図も含めて回答している。
 「入試問題の難易についてだけでなく、出題の背景、大学側の考えや入学後のカリキュラムにまで、話し合いを深められればいいと思います」(谷川学長)
 そのため入試連絡会は、まず全体会として両大学の学部の概略と'01年度入試の募集要項の説明、質疑応答を行った後、各学部ごとの分科会を行った。
 「これを機に大学と高校の連携を進め、地域の高校生が自分に合った進路を実現できるよう双方で努力していきたいですね」と谷川学長は語った。
 単位互換制度で県内の大学の活性化を図り、入試連絡会で高校と大学の連携を進めるなど、長崎県では今まさに大学改革が進行中だ。少子化の中、生き残りをかけ魅力ある大学へ変貌しようとする動きは、全国でさらに活発化するだろう。

図11 単位互換提供科目数('01年度)
図11 単位互換提供科目数('01年度)


写真 「NICEキャンパス長崎」協定調印式




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