VIEW21 2001.02  特集 高校に迫りくるIT化の波

★事例★
日常業務からボランティアまで多様な場面でITを活用
高知県立安芸高校

高知県立安芸高校
設立1900年。普通科、文理科、商業科の共学校。全校生徒649名。'00年度には100周年を迎えた。最近2年の入試では、高知大19名、高知女子大9名、お茶の水女子大1名など、国公立大に39名が合格。私立大は同志社大、法政大、福岡大などに合格者を輩出。家庭クラブなどを中心にボランティア活動が盛ん。


 高知県立安芸高校は'00年5月、教師(教務部)から生徒への毎日の校内連絡を、全面的にオンラインに切り換えた。それまでは、職員室の前の黒板に書かれた連絡事項を各クラスのホームルーム委員が写してクラスの黒板に転記して伝達していた。今は、教師(教務部)が連絡事項を、各クラスに電子メールで送っている。それを視聴覚委員と呼ばれるクラスのパソコン係が、各教室に1台ずつ設置されているパソコンの掲示板を朝と夕方チェックし、黒板に転記している。各クラスに一つずつ固有のメールアドレスが割り振られているので、必要なクラスに必要な情報だけを送ることもできる。
 掲示板で見られるのは、まず週間予定表である。何月何日の何時限目は学年集会、何月何日の午後は体育祭の練習といった予定が週単位で載っている。他に、例えば国語の教師が漢字テストについて、実施日、出題範囲などの連絡を伝えることができる。情報の掲示時期は指定できるので、情報は不必要になるまで消されることはない。
 同校では、4年前から朝のSHRにおける10分間読書を実施している。朝の連絡がオンラインによって簡便になり、その分、生徒は読書に集中できるようになったというプラス面もあるという。

CS部が教師のコンピュータ使用をサポート

 安芸高校がIT化に乗り出したのは、98年度、高知県の学校情報化のモデル校となったのがきっかけだった。現在、校内にパソコンは約150台。うち生徒用が90台、教職員用が60台、教職員用に限ると一人に1台の計算だ。パソコンは職員室、マルチメディア教室のほか、各クラスにも1台ずつ設置されている。すべてのパソコンがLAN(校内ネットワーク)で結ばれ、インターネットにも常時接続できる環境にある。
 '98年度に大量のコンピュータが入ってきたとき、教師の反応はどうだったのか。戸惑いや拒否反応を見せる教師はいなかったのだろうか。
 「内心不安もあったかも知れませんが、これからコンピュータは使えて当たり前の道具になるという認識を多くの先生が持っていました。ですから比較的すんなり受け入れてくれたと思います」と、CS(コンピュータ・サポート)部長の和田拓先生は語る。 「何か始めるとき、失敗を恐れる気持ちは誰にもありますが、それ以上に成功を期待する気持ちの方が強かったんじゃないでしょうか」
 進路指導部の坂本道昭先生は「本校は若い教員が多いという事情も、スムーズに事が運んだ一因だと思います」と指摘する。ちなみに、同校の教員の平均年齢は36歳である。
 IT活用の準備段階に立ち上げたCS部を中心に、コンピュータ活用の検討は進められた。CS部は、ITに関する事業の推進やコンピュータの操作などについて教師をサポートする分掌であり、教師の間に利用を広めるため、こんなさりげない工夫もしている。
 「コンピュータを使わない先生の隣で、別の先生にコンピュータを使ってもらうんです。しかも、いかにも便利そうに。例えば出席順に並んでいる生徒のリストを、表計算ソフトを使って、ある教科について点数が高い順に一遍に並べ替えができることをやって見せる。隣の先生も『そんなに便利なのか。私も使ってみようか』という気になってくる。コンピュータを使いなさい、と押し付けるよりはるかに有効です」(和田先生)
 CS部は現在7名、うち専任が3名である。当初2名だったが、校内の期待が高まるにつれ、毎年1、2名ずつ増えていった。CS部の仕事で多いのは、やはり日常のヘルプである。「添付ファイルの開き方が分からない」「ソフトの使い方が分からない」など、質問を受けたときにその場で答える。時間を設けて講習会を開くこともあるが、サポートする側もされる側も忙しいので、その場その場での解決が中心だ。
 「職員室の中ではできるだけ、近くにいるコンピュータに詳しい先生がそうでない先生にアドバイスするようにしています。そうしないとCS部に多大な負担がかかってしまいますから」(教務主任・今井洋一先生)


写真 蒲原義人 写真 今井洋一
高知県立安芸高校教諭
蒲原義人
Kamohara Yoshihito
同校に赴任して8年目。数学科担当。進路指導部長。「授業では確実、丁寧に教えることがモットー」
高知県立安芸高校教諭
今井洋一
Imai Yoichi
同校に赴任して11年目。数学科担当。教務主任。「地域に貢献できる人材を輩出する高校でありたい」
写真 和田 拓 写真 坂本道昭
高知県立安芸高校教諭
和田 拓
Wada Taku
同校に赴任して7年目。国語科担当。CS部長。「独創性のあるコンピュータの使い方を生徒に期待」
高知県立安芸高校教諭
坂本道昭
Sakamoto Michiaki
同校に赴任して7年目。地歴・公民科。進路指導部。「生徒と魂と魂の触れ合いのできる教師が目標」

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