中・高…「総合的な学習の時間」の 中・高の継続性はどうあるべきか
中学校は体験活動、高校は課題探究活動中心に
大半の小・中学校は、既に「総合的な学習の時間」(以下「総合学習」)を実施している。高校での学習内容を小・中学校までの成果を踏まえたものにすることは、他教科と同様「総合学習」においても大切であろう。「総合学習」の小・中学校の傾向と、中・高の接続の望ましい方向について、ベネッセ教育研究所の高階玲治顧問に話を聞いた。
――中学校の「総合学習」の傾向を教えてください。
高階 国際理解、環境、福祉・健康、情報といった現代的課題に、地域の課題をミックスさせたものが目立ちます。例えば福祉と地域を絡ませて、地元の老人ホームを訪問しながら高齢者問題を考えるといったものです。パターンとしては、学校や学年で「私たちの町の福祉問題」といった大まかなテーマを設定して、具体的なテーマ設定は生徒に任せるところが多いですね。ただし、ほとんどはグループ単位での活動となっています。
もう一つは進路学習です。職場体験を実施する中学校は多いのですが、時間不足が悩みの種。そこで「総合学習」に組み込もうというわけですね。
――高校でも進路学習などは行っています。
高階 そうですね。「指導要録」では「総合学習」の評価対象として、「課題設定の能力」「問題解決能力」「学び方、ものの考え方」「学習への主体的・創造的態度」「自己の生き方」を挙げていますが、これは小学校から高校まですべて同じです。ここまでが中学校でやること、ここからは高校の役割といった系統性がないのが、他の教科・科目とは違うところです。文部科学省が提示した学習活動例も、小・中・高で特に大きな違いを設けていませんから、取り組む課題は似てきます。
――それでは、高校段階では、「総合学習」のレベルをどこに設定すればいいのでしょう。
高階 課題は同様でも、高校ならではの展開をすることは可能です。中学校では、「グループ学習で地域が絡む問題を体験的に学ぶ」という形が代表的です。高校では、生徒が本当に関心のあるテーマを専門的に追究していくような、個人(または数人による共同研究)を単位にした研究活動に重点を置くのがよいと思います。それは必ずしも地域を対象としなくてもいいし、体験学習を重視することもありません。専門性の高い課題設定をすれば、研究対象が地域を離れることが出てくるでしょうから。また体験学習は、これからは中学校までに何度となく行われ、一定の社会体験のある生徒たちが高校に入学してきます。高校では中学校のようにまず体験から入るのではなく、テーマや研究活動の流れの中で、必要性があれば体験するという姿勢でいいと思います。
――高校では、体験よりも個人の課題探究に重きを置くことが大事というわけですね。
高階 それは大学との接続という面でも重要だと思います。近年、AO入試を導入する大学は増えていますが、あの入試ではまさに問題意識を持って課題探究ができる人材を求めていますからね。
ただし個人研究にシフトしすぎると、活動が個々に行われて生徒同士のコミュニケーションが不足する危険性もあります。そこで不可欠なのがみんなの前で発表したり相互評価し合う機会を多く設けること。例えば中間発表会で仲間の優れた報告を聞けば、他の生徒も「あの人も頑張っているから自分も」と、相乗効果が生まれます。
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