生徒が「学び」に自ら向かうよう導く工夫が必要
高校現場の教師からは、「生徒の家庭での学習時間が減った」という声を聞くことが多い。授業の予・復習をどうすればよいのか分からなかったり、課題を与えても満足にできない生徒が増えているというのが現状のようだ。今後、授業時間が減少すれば、生徒の学習時間がさらに減少し、学習離れが深刻化することが予想される。
ただ単に課題や宿題の量を増やしたり、「勉強せよ」の掛け声だけでは、生徒の学力は向上しないことは目に見えている。生徒自ら「課題に取り組もう」と思わせる仕掛けづくりや、生徒一人ひとりの学力の状況、あるいは行動特性に応じた課題の与え方などの工夫が、今まさに求められていると言ってよいのではないだろうか。
そのためには、授業と家庭での学習とを切り離して考えるのではなく、両者の学習を相互に関連付けることで効果的に学力を向上させるような仕組みづくりも、不可欠になってくる。
ベネッセ文教総研では、昨年1年間をかけ、全国14校の高等学校と共同で、「学力到達度評価研究」を行い、生徒一人ひとりの学力の状況や行動特性に即した指導はどうあるべきか、共同研究校の先生方と共に検討した。
具体的には共同研究校の高校2年生約4000人を対象に、昨年7~8月にかけて英語、数学、国語の学力評価問題と、自己概念に関する調査を実施した。
その結果から、生徒の学力を各教科ともA~Eの5段階(Aが最高)に分け、各学力段階にある生徒の自己概念に関する調査の回答結果や、実際の生徒一人ひとりの行動特性などを合わせて鑑み、「クラス担任」と「教科担任」の二つの立場から、生徒の育成方法について研究を行った。
特に、教科担任については、高校2年生7月の進研模試の全国偏差値で48相当の学力を到達基準、58相当の学力を達成基準とし、それぞれの基準を越えるために、生徒はどのような学習行動を身に付けるべきで、その学習行動を促すために、教師は具体的にどのような指導をすべきかという観点で検討を進めた。
今回の特集では、この研究成果を基に、授業と家庭学習を有機的に結び付け、生徒を自発的な学びへと導くためにはどのような指導が必要なのかを考えていきたい。
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