英語教育の新機軸
神奈川学園中学校高校
幅広い体験を通し伝えるべきものを 生徒の内に培う
中高一貫教育を実践している神奈川学園中学校高校では、国際理解を軸とした英語教育に6年間通して取り組んでいる。「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を、バランスよく身に付けさせながら生徒の他者理解、そして自己理解をサポートする同校。その具体的な取り組みについて、お話をうかがった。
学びの意欲を高める
「本校の教育目的は、知識をただ詰め込むことではなく、生徒の視野を広げ、自分で物事を考える力、考えたことを表現する力を身に付けさせることです」
神奈川学園中学校高校の教頭を務める池田征矢雄先生の言葉が示すように、同校では英語教育においても、英語力向上だけでなく異文化理解や自己表現力を高めることにも力を入れている。
まず、中学校では「抵抗なく英語を話す」を目標に授業が行われる。イラストなど視覚的に理解させるための資料を多用するなど様々な工夫を凝らす。教師の一方的な解説に終始しがちな文法説明も「新出文法の導入は、一切日本語を介さず『生徒の頭に英語チャンネルを作る』ため、生徒の生活に密着した語彙や表現を増やします。生徒は英語を話すことに抵抗がなく、新しい表現で教師や友達と話すことを楽しんでいます」(中学英語担当・高橋文恵先生)
生徒にとってそれまでの学習成果が発揮される機会となるのが、中学校3年次に行われるオーストラリア研修で、生徒にとって国際的な知見を広げる機会ともなる。
「事前学習では、日本とオーストラリアの福祉について調べたり、老人福祉施設でボランティア体験をしたりします。そこで気付いたことなどを英語で相手に伝えられるように、必要な表現方法も学びます」(池田先生)
オーストラリアでは、生徒は福祉施設を訪問、高齢者と英語で交流した。事前学習を通して生徒は語るべき経験、生きた知識を得て、異文化交流に臨んだわけだ。そうすることで「生徒の英語学習や国際理解に対する意欲がさらに高まる」と池田先生は強調する。
「日本での経験があるから、例えば車椅子に乗った高齢者と話す際も、生徒はすっとかがんで相手と同じ目線で話します。ただ英語を話すだけでなく、相手のことを考えて、どうすればコミュニケーションできるのか、事前学習で生徒は理解したのです」(池田先生)
国際理解は英語力だけでは実現しない。自分と異なる他者を理解しようして初めて実現することに生徒たちは気付いたのだった。
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