VIEW21 2001.12  今日と明日の活力をもたらす創意工夫
 学校活性のヒント 静岡県立浜松西高校

静岡県立浜松西高校

2年生の12月までに
志望校選択のリハーサルを行い、
生徒の選択力を大きく育てる

 中だるみの時期と言われる2年次にどのような指導を行うかは、高校現場にとって重要な課題の一つだ。将来の目標の発見や学習面での飛躍が期待されるこの時期を、生徒にどのように過ごさせるのか、各校の工夫のしどころだろう。
 静岡県立浜松西高校では、2年生3学期を3年生0学期と位置付けている。大学入試まで、実質1年を切っていることを生徒に改めて認識させ、気持ちを切り替えさせるためである。もちろん、フレーズだけでは生徒は動かない。2年生3学期から、3年生としての意識に変えるためには、当然、様々な工夫が2年生2学期までに必要となる。

学力自己判定で目標との距離を把握

 1年生から職業研究、学部・学科研究を積み重ねてきた生徒は、2年生になると将来への希望が大きく膨らんできている。「この時期だからこそ」と進路指導主事の竹山喜章先生は言う。「厳しいようでも、目標を実現するためには越えなければならない高い壁があることを理解させる必要があります」
 同校では2年生11月の進研模試の結果データに基づいて、生徒自身に現在の自分の学力と志望目標とのギャップを把握させる「学力自己判定」を実施させている。「学力自己判定」には、長年に渡って校内に蓄積してきたデータで作成した同校独自の「大学受験基準表」が用いられる。生徒は全国偏差値や校内偏差値などの自己データをフォームに記入し、志望校の入試科目や配点などを調べながら、その合格可能性はどれくらいかを自分自身で分析していく。
 「センター試験と個別試験の入試科目や配点を見ながら、得点があと何点伸びたら判定がCからBに変わるのか、そのためにはどの科目で上積みすればいいのかなどを生徒が自分で計算しながら確認していきます。入試本番までの1年、どの科目をどのように学習するのかを生徒自身が真剣に考えていく契機となるのです」(進路指導部・長坂靖之先生)
 模試の判定だけに一喜一憂しがちな生徒に「C判定でもBに近いCと、Dに近いCでは違う」「あと15点上積みするならどの科目に一番伸びしろがあるのか」といったことにまで目を向けさせる。この時期を境に、「FINEシステム」などを利用して、幅広い視野での志望校検討を始める生徒も増えてくるという。
 同校では2年生12月までに、生徒が自分の志望校について、その教育方針や卒業後の進路を調べる「個別大学調べ」を完了させる。その取り組みは、まさに1年後の志望校選択のリハーサルだ。
 「2年生12月までに3年生並みの志望校選択を実施する目的は、早く志望校を決めさせることではありません。生徒には志望校選びを一度、実体験させておく必要があると考えているからです」(長坂先生)
 「大学に進学するのは生徒自身です。しかしながら、最近は肝心の志望校を適切に選択できない生徒が増えています。特に3年生の後半に志望校選択を初めて経験すると、不安や焦りからか、非常に視野の狭い選択をしがちです。現実離れした憧れ校に固執したり、挑戦意欲を持てずに妥協したり、見ていてもどかしい思いをすることが少なくありません。強い意志で最後まで自分の志望を貫くには、しっかりとした志望校選択が不可欠です。そのためには、早い時期に一度、志望校選択の擬似体験をしておくことが有効だと考えています」(竹山先生)

 
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