中・長期的なスパンで現れる 「総合学習」と教科学力の相関性
高校が「総合学習」の実施内容を検討する場合、大学入試の存在は無視できない。国立大がセンター試験で5教科7科目を課すなどの動きの中で、「入試に直接結び付かない指導に力を入れる余裕はない」という声も聞かれる。しかし、教科学習と「生きる力」の育成は必ずしも相反するものではないということが今回の調査で明らかになった。中学校では約半数の教師が、教科の学習活動に「総合学習」からの影響を受けていると回答している(図2)。特に「生徒への動機付け」「調べ方のスキル」「問題解決的な学習」「発表活動」は教科学習に活かされているようだ。
つまり、「総合学習」は生徒の「生きる力」の育成だけではなく、教科学習や特別活動を含めた教育活動全体の活性化につながっていると言えるだろう。
しかし、田中助教授は、「総合学習」を教科学力向上の即効薬として考えるべきではないと警告する。
「教科学力の向上に『総合学習』の成果が現れるには、少なくとも3年はかかります。1年目はまず、自分で課題を見つけ、それについて調べて、最後にレポートにまとめて発表するという、1年間の『総合学習』のサイクルをきちんとつくることが求められます。これは、教師が個別にするのではなく、学校全体として取り組むことが必要です。2年目はカリキュラムのプランが学校全体で明確になり、取り組み自体もより主体的になってきます。しかし、まだ『生きる力』の評価までは到達できない。3年目になってやっと経験が積み重なり、生徒自身にも『生きる力』が身に付いてきます。また、学校なりに生徒の『生きる力』を評価する規準もできてきます。この段階でようやく『総合学習』の成果が教科学力の向上につながるようになります」
「総合学習」が定着し、その成果が教科学習の深化につながるまでは、中・長期的な視点が必要なようだ。
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