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学生の変化に大学教育はどう対応しているか
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学生生活実態調査を大学改革に生かし学生主体の大学を目指す
 これらの取り組みの成果は、同大が行っている「学生生活実態調査」の結果からもうかがえる。同調査は学生の生活実態や大学の教育に対する満足度を把握するため、過去に11回実施されているが、近年の調査結果からは、大学に対する学生の評価が少しずつ好転していることが読み取れる。
 「大学生活への満足度は『授業』『教育研究用施設・設備』など八つの項目について調査していますが、ほぼ全項目で満足度が高くなっています。例えば、『授業』に対する評価は、97年に4点満点で1.89だったものが02年には5点満点で3.09に上がっています。あるいは、志望理由についての調査では、従来は『北海道・札幌の気候・風土』や『北大の特色・学風』あるいは『実力相応と思った』など、漠然とした理由を挙げる学生が多かったのですが、近年は『自分の希望した専攻分野がある』『将来の進路を考えて』『研究環境が整っている』など、将来を見据えた上で入学してくる学生が徐々にですが増え始めているようです(図4)」(佐藤教授)
図4
 また、同調査においては、定量的な調査だけではなく、フリーアンサー形式で大学に対する学生の意見を募っている。例えば、授業に対しては「教官の一方的な授業になっている」「教官によって指導レベルに差がある」といった厳しい意見や、他大学の例を挙げたカリキュラム改善案など、具体的な提案が寄せられている。これらの意見はその都度集約され、大学の指導の改善に生かされている。実際、02年度から実施されている評価基準の開示は、学生の意見を受けてのものだ。
 「学生から指摘のあった、授業の成績評価の明確化については、シラバスに評価基準を書いてもらって、優・良・可それぞれの評価結果の割合を02年度から開示するようにしました。『同じ科目なのに評価基準が違う』という苦情も随分減るのではないかと思います」(徳永副学長)
 学生の変化を調査によって客観的に把握した上で様々な改善を行い、さらにその成果をリサーチするという北海道大の手法は、今後の大学改革の一つの方向性を示している。
 しかし、大学での取り組みが進む一方で、精神的な悩みを抱える学生も増えてきている(図5)。将来の進路に対する不安、人間関係に対する不安、やる気が出ないなど、その悩みは様々であるが、充実した学生生活を送るためには、精神面でのケアも重要であり、これは多くの大学に共通の課題である。同大でも、保健管理センターや学生相談室の充実に力を入れているが、学生の生育環境の変化に伴い、大学が学生一人ひとりをサポートすることが、今後一層求められてくるのだろう。
図5
 
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