ベネッセ教育総合研究所
指導変革の軌跡 茨城県立下館第一高校
茨城県立 下館第一高校

茨城県立 下館第一高校
2004年に創立81年目を迎える伝統校。豊かな人間性と自主自立の精神の涵養を目指す。中学校への広報活動や大学模擬講義など、積極的に中高連携、高大連携に力を入れている他、ITを活用した授業も展開している。
設立●1923年(大正12年)
形態●共学
生徒数(一学年)●約280名
03年度入試実績●国公立大には東北大、茨城大、筑波大、お茶の水女子大など108名。私立大には慶應義塾大、東京理科大、法政大、早稲田大など延べ534名。
住所●茨城県下館市下中山590
電話●0296(24)6344
URL●
http://www.shimodate1-h.ed.jp

柴原 好夫

茨城県立下館第一高校
柴原 好夫
Shibahara Yoshio
教職歴24年目。同校に赴任して7年目。進路指導主事。「常に生徒と同じ方向を見て、共に学ぶ姿勢を保ちたいです」

飯村 隆

茨城県立下館第一高校
飯村 隆
Iimura Takashi
教職歴27年目。同校に赴任して10年目。教務副主事。「後悔しないように、今やっていることに全力を尽くしたいですね」

瀬尾 勝美

茨城県立下館第一高校
瀬尾 勝美
Seo Kazumi
教職歴23年目。同校に赴任して4年目。2学年副主任。「授業を通して、生徒には考えることの面白さを学んでほしい」

外山 徹

茨城県立下館第一高校
外山 徹
Toyama Toru
教職歴23年目。同校に赴任して11年目。2学年担任。「『今ここでベストを尽くす』をモットーに、生徒の指導に当たりたい」

木村 益巳

茨城県立下館第一高校
木村 益巳
Kimura Masumi
教職歴21年目。同校に赴任して2年目。進路指導副主事。「失敗すること、諦めないことの大切さを伝えたいです」

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指導変革の軌跡45
そのとき教師はそして生徒はどう変わったか
茨城県立下館第一高校 学校力向上
定員割れの危機からの脱出生活・教科・進路指導を広報活動へ


 02年2月、職員室に予期しないニュースが飛び込んできた。定員割れ――。二次募集が行われる中、下館第一高校の教師の誰もが、まさかという思いに駆られていた。
 同校のある県西地区においては、確かに定員割れは決して珍しいことではない。近年では約半数の高校で定員割れが生じているのも事実である。しかし、県下有数の進学校として実績を上げ続けてきた同校にとって、突き付けられた現実はあまりにもショッキングなものだった。
 「下館市は県境にありますから、下館の高校に魅力がなければ、優秀な生徒は県外や隣の水戸市、あるいは私立校に流れてしまう。ましてや中学生の人口はだんだんと減っていく。深刻な危機意識を感じました」
 教務副主事の飯村隆先生は、このように当時を振り返る。さらに教師を驚かせたのは、入学してきた生徒の質だった。2学年副主任の瀬尾勝美先生は「今までの生徒とは違うなと思いました。教師と生徒が全く横並びの感覚なんです。物怖じしない反面、敬語が使えないのです。基礎学力に不安のある生徒もいました」と指摘する。


学校全体で生活指導に当たり教師の「本気」を示す
 そもそも定員割れの原因はどこにあったのか。進路指導主事の柴原好夫先生は、この点を次のように分析する。
 「本校は伝統的に、自立した生徒を育むという考えの下、自由な校風で通っています。しかし最近の生徒は、ややもすると身なりの自由ということに走りがちです。服装が乱れた生徒が登校する姿を見て、地元の中学生や保護者の間で、本校に関する悪評が立ちました。それが定員割れの大きな原因だろうと考えています」
 折しも同年の卒業式で実施されたアンケート結果が、それを裏付けている。卒業生とその保護者に対して同校のイメージを尋ねたところ、最も目立ったのが「学習指導は十分だが生活指導が足りない」という回答だったのである。受験生を呼び戻すためには、何よりもまず、同校が地域の中学生にとって魅力的な学校にならなければならない。定員割れという事態に直面して、教師間の危機意識は「学校力向上」の取り組みへと転化していくこととなった。
 まず同校が着手したのは、定員割れの最大の原因を解消すること、すなわち生活指導の強化である。年3回、学期初めの全校集会を使って、全教師で全生徒の服装検査を1時間掛けて行うというものだ。これまでも個人的な指導は行っていたが、全教師を挙げて一斉指導するというのは、創立以来80年の歴史の中でも実に初めてのことだった。教師が本気で取り組む姿勢を生徒に示した形である。
 「本当は外見は自由でいいんです。しかし残念ながら、外部の人はまず外見で判断する。外見が自分たちのイメージを作ってしまうということを、事実として伝えました。その上で、まずは外見をきちんとしよう、そう投げ掛けたんです。これについては生徒も素直に納得してくれました。中には歓迎する生徒もいましたね。周りに合わせてやむを得ずルーズソックスを履いていた、だからこういうのを待っていたんだと。今年度で実施2年目、まだまだ問題点はありますが、随分改善されました」(柴原先生)
 生徒の服装が落ち着いたことにより、近隣中学校の同校に対する評判も急速に高まっていった。噂を聞きつけたある中学校の校長が、生徒の登校風景を見に来たこともあった。同校が本気で変わろうとしているか、中学校側も注意深く観察しているのである。
「クリーン作戦」
「クリーン作戦」
下館第一高校では、中学校のみならずPTAや地域とのコミュニケーションも積極的に図っている。ボランティアで学校周辺のゴミ拾いを行う「クリーン作戦」もその一つ。服装指導と合わせて、こうした取り組みが地域からの信頼を勝ち取る要因になっている。


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