ベネッセ教育総合研究所
特集 広報が学校を活性化する
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「総務委員会」を中心にした組織的な学校運営の改善
 以上、同校が行っている組織的な情報開示活動を見てきたが、そのいずれもが、いわゆる「奇をてらった」ような活動ではない。むしろ、既存の取り組みを一つひとつ実直に実行している点こそ、同校の活動の本質と言えるだろう。実際、同校では、情報開示を専門に扱う部署を立ち上げるようなことはしていない。中学校・大学との連携は進路課、中高連絡懇談会は教務課、学校評価は総務課という具合に、既存の校務分掌を生かした体制を組んでいるのだ。佐藤校長はその狙いを次のように語る。
 「一つの部署に過剰な負担を掛けるのを避けたかったのはもちろんですが、情報開示に学校全体で取り組んでいる、という意識付けを図りたかったのです。学校現場ではまだまだ『全員が同じ方向を向いて頑張る』という発想が浸透していません。業務をできるだけ公平に分配することで、意識改革を図りたいと考えています」
 もっとも、分掌ごとに業務を分担することは、責任の分散化につながる危険性を秘めている。そこで同校では、分掌間の連絡組織として「総務委員会」を設け、情報開示活動全体の調整を図っている。
 「総務委員会には、各分掌の課長の他、校長、教頭、事務部長、各学年主任が出席します。言わば学校経営の戦略会議のようなものです。保護者や生徒に対するアンケートの実施方法や項目の検討、そしてその結果の共有などもこの会議で行っています」(堀先生)
図3
同校では折に触れ、保護者や生徒に学校の教育活動に関するアンケートを取っている。これらの結果は「総務委員会」にフィードバックされ、学校改善の原動力にもなっている。
 一方、組織としてはオーソドックスな手法を用いながら、同校では「総務委員会」に、各分掌の活動改善案をまとめる権限を与え、情報開示活動を踏まえた学校改善を図っている。すなわち、情報を単に外に流すだけでなく、そこからのフィードバックを踏まえた学校運営を図ろうとしているのだ。
 「情報開示と言っても、一方的な学校の説明だけでは単なる『宣伝』にすぎません。むしろ学校にとっての本当の課題は、教育活動の改善にいかに結び付けるかだと思います。本校では、情報発信と教育活動の改善をセットとして捉え、目標設定→情報開示→外部の意見集約→改善というサイクルの構築を目指しています」(佐藤校長)
 同校が学校評価や説明会を軸に活動を行っているのは、こうしたビジョンがあってのことなのだ。インタビューの最後に、佐藤校長は今後の展望を語ってくれた。
 「情報開示・アカウンタビリティの確保が社会的に急務とされる中、学校だけがいつまでも『最後の聖域』であってよいわけがありません。積極的な情報開示と、それに基づく教育活動の改善を図ることで、今一度、地域や保護者との関係を問い直すことが求められていると感じています」
 伝統校の地位に甘んじることなく、地道に地域・保護者との連携を強化しながら学校改革を続ける同校の姿勢には学ぶべき点が多いのではないだろうか。
図4


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