ベネッセ教育総合研究所
特集 学力多層化への対応
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学力多層化の実態と層別対応の必要性

学習習慣の未定着や「受け身」の姿勢により、
下位層に定着したまま中・上位へと浮上できずにいる生徒が多い。
一斉授業を前提とする中でも、各学力層に対応した指導が、一層求められるようになってきた。
進研模試とスタディーサポートのデータにより、学力多層化の実態を整理してみたい。


受け身の学習で自学自習力が減退
 「下位層が年々多くなっている」
 「上位層から下位層までの分布が広がっている」
 近年、高校現場ではこうした教師の声を聞くことが多い。教師の実感として、上位層と下位層の学力格差が広がっているというのである。
 実際、こうした傾向は進研模試データからも見て取れる。図1は偏差値度数分布の過年度比較の一例(図1・注)であるが、99年度のグラフと比べて03年度は中位層を頂点とする放物線がなだらかになっており、下位層が拡大していることが分かる。教育現場における教師の実感が裏付けられた格好である。
図1
 なぜこうした変化が起こってきているのだろうか。
 一つ考えられるのは、学習習慣が身に付いていない生徒が年々増えているということだ。図2は「通塾の増加」を表したグラフである。
図2
中学校段階における教科内容の削減に応じて、近年、高校受験に向けて通塾する生徒が増えていることは、しばしば指摘されるところだ。予備校や塾での学習が中心であった場合、高校で自主的・計画的な学習スタイルへの転換を図りにくい生徒も見られるようである。
 そのため多くの高校では、初期指導のプログラムを充実させて「予習→授業→復習のサイクル」を定着させ自学自習力を身に付けさせようとしている。しかし、高2生で毎日自宅学習をしている生徒の割合は伸び悩んでいる(図3)。
図3
1年次に学習方法を身に付けないまま進級していった結果、2、3年次においても学習のコツがつかめず、下位層に定着し続ける傾向が強くなり、その結果、自学自習力を身に付けた上位層と、下位に定着した生徒との格差が拡大しているのではないだろうか。


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