ベネッセ教育総合研究所
特集 進路学習の深化を探る
塩野谷英彦
栃木県立宇都宮高校
塩野谷英彦
Shionoya Hidehiko
教職歴26年目。同校に赴任して15年目。教務主任。世界史担当。「学ぶことは生きることだ。生きることは学ぶことだ」
鈴木達哉
三重県立津高校
鈴木達哉
Suzuki Tatsuya
教職歴23年目。同校に赴任して2年目。国語担当。「社会に出て通用する人間になるよう、生徒をしっかり鍛えたい」
井上哲秀
福岡県立小倉高校
井上哲秀
Inoue Tetsuhide
教職歴16年目。同校に赴任して11年目。物理担当。「自分で決めたことを積極的に実行できる生徒を育てたい」
久保田圭二
大分県立大分舞鶴高校
久保田圭二
Kubota Keiji
教職歴18年目。同校に赴任して3年目。2学年主任。数学担当。「生徒と共に感動し、共に成長し続ける教師でありたい」
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これまでの進路学習の成果と限界を探る

高校現場で本格的な進路学習が実施されるようになって久しい。特に進学校においては、職業研究や学部・学科研究を中軸に据えた活動が、一種の「スタンダード」として確立したようにも見える。だが、指導プランの完成度が高まる一方で、活動の目的や手法において見直すべき点が見え始めたのも事実だ。進路学習に率先して取り組んでこられた4人の先生方と、問題の所在を探ってみた。


「職業・学問調べ」中心の進路学習の限界
----高校現場で進路学習が本格化してずいぶん経ちますが、ここ数年で社会情勢や生徒の気質といった、指導の前提条件となる部分が大きく変わってきたように思います。先生方はそうした変化をどのように感じていらっしゃいますか。
塩野谷 私が感じているのは生徒の「子ども化」を認識した上で指導を行う必要性が増してきたということです。例えば本校でも以前であれば、新入生の合格者手続きなどは生徒が一人で来たものですが、最近では保護者と一緒に来る生徒が非常に多くなっています。精神的に自立する時期がずれてきていると思います。本校では20年以上前に、現在につながる進路学習プランの原型ができ上がったのですが、最近は生徒をまず「大人にする指導」を行ってから進路学習に入る、という流れになってきています。
井上 生徒の変化に関しては、進路学習の成果をきちんと生かせる生徒が少なくなっているように思います。例えば職業や学問について調べ学習を行った場合にも、ただ「調べただけ」で終わってしまい、調べた結果を更に深めたり、調べた成果を自分の人生と結び付けて考えることができない生徒が少なくありません。ですから、「将来について考えることには意味があるんだ」、更に言えば、「自分の人生は価値あるものなんだ」という自分自身の価値を、まず感じさせる指導が必要になってきています。「情報さえ与えれば、将来展望を描けるはずだ」という前提は崩れていると感じています。
鈴木 それと並行して、我々が進路学習の中で生徒に伝えるべきことを見直す必要もあるでしょうね。企業の求める人材要件などを見ても、最近では、業界動向や専門性よりは、コミュニケーション力や自己表現力、思考力といった普遍的な能力に対するニーズが非常に高まっています。これまで我々は、どちらかと言うと、進路に関わる知識の習得を重視していた面がありますから、社会的ニーズを踏まえた目標設定を、改めて行うことも必要でしょう。
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