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東京大大学院教育学研究科・教育学部教授
亀口憲治
Kameguchi Kenji |
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大学人の声 |
今こそ「自己理解」の重要性を再評価すべき |
高校の進路学習については、高校生の進学先となる大学側も関心を持って見つめている。東京大で学生の進路相談などにも携わってきた亀口憲治教授にお話をうかがった。 |
自己肯定感・将来意識の希薄さに問題が |
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高校で進路学習が本格的に実施されるようになって久しい。進路学習で培った向学心を原動力に、進学実績を大幅に伸ばした高校も少なくない。だが、亀口教授は、進路学習の成果が、本質的な「生き方」を考える部分まで深まっていないことを懸念している。
「本学では毎年『学生生活実態調査』を行ってきましたが、その最新の結果によると、『自分が本当に何をやりたいのか分からない』という質問に対し『よく当てはまる』『やや当てはまる』と答えた学生は、大学3・4年であっても、実に40%以上に上ります。高校でも進路学習に取り組まれているのでしょうが、どうも大学に入学した時点で学生の意識は止まってしまうようです。今後は『大学を出てどうなりたいのか』『そのために大学で学ぶことをどう位置付けるのか』といった次元まで深めていく指導が、高校・大学を通じて問われてくると思います」
とはいえ、大学卒業後をも含めた長いスパンで人生を考えさせることはそれほど容易なことではない。実際、亀口教授自身、「人生設計という意味での進路指導は高校段階で行う必要はないだろう」と言う。
「例えば、私の専門である心理学でも、細かなカテゴリーに分ければ60以上の専門分野があります。その数は研究水準の向上に伴って毎年増えていますから、大学の研究者でさえ『心理学の全貌を語る』のはほとんど不可能です。職業についても同様ですよね。こうした中、選択を迫る形で将来像を描かせる指導は理想とは思えません」 |
自己理解の重視が今後求められる |
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では、そうした中で、大学が高校に育成を期待する進路観とは何なのか? それは端的に言えば「自己理解の徹底」ということになりそうだ。
「学問情報・職業情報の蓄積とは別な観点、言うなれば『いかに』選択するかという価値観を確立する指導が大切だと思います。学問、職業の情報を仕入れるだけでは、情報に対する合う・合わないだけの選択に陥ってしまい、それとは異なる現実にぶつかった時に、すぐに諦めてしまいます。しかし、その前段階にある『自己理解』をしっかりと行い、『社会とどのように関わりたいか』、あるいは、『自分はどのような興味・関心を持っているのか』といった問題意識があれば、その時々に応じた納得のいく結論が出せるのではないでしょうか」
そのための具体的なサポートとして亀口教授が提案するのが、生きる意味や働く意味、学ぶ意味などを根本から考えさせる指導だ。
「例えば、自分が社会とどう関わりたいか、どう生きたいかを一言ずつ反問しながら書かせるといったことが考えられると思います。また、進路観形成には保護者の力も欠かせません。家族と職業観について語り合うといった取り組みも有効でしょう。その際に、『なぜそう思うのか』をきちんと言語化し、自分なりの意味付けができるようになれば望ましいですよね」
亀口教授によると、近年は地方公立高出身の女子生徒が東京大で活躍するケースが目立ってきているという。しかも、そうした生徒の多くは、自己形成に関わる指導をきちんと受けてきた生徒ではないかと言う。亀口教授のメッセージは、今一度進路指導の原点を見直す上で、一つの示唆を与えているのではなかろうか。 |
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