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特集1導入期の集団づくり
課題整理
「学ぶ集団」づくりを促す3つのポイント
自学自習力の低下、生活環境・気質変化、中学校の指導の変化など、様々な側面から入学時の生徒の変化が指摘され、その実情を踏まえた導入期指導の在り方が議論されている。
05年2月号では、学びに向かう集団づくりに焦点を当てて高校入学後から導入期の在り方を三つの側面から整理したい。
高校入学後の在り方を考える観点は様々だが、ここでは学習関連に絞って、学びに向かう集団へと生徒を誘(いざな)うための働き掛けを中心に導入期の課題を捉えてみたい。
(1)学校の指導を受け入れ、「努力すれば成果が出る」と自らを前向きに捉える気持ちをどう育むか
(2)学校中心の学習サイクルの中で学習習慣の定着をいかに図るか
(3)上記(1)(2)の基盤の上に、質の高い学習をどう積み上げるか
課題 1 生徒の意識づくり
学校の指導を受け入れる気持ちを高める
自分及び学校に対する肯定的な意識を持った生徒の集団となるために、生徒を誘う取り組みを導入期に行う
必要性を指摘する声が多く聞かれる。その背景として、
「自己効力(進歩の実感と自分への期待の膨らみ)」
を伸ばすことが、学びに向かう生徒づくりの重要な視点の一つとなっていることが挙げられる。
図1
は、高校1年生秋の時点での学習意識と行動に関するデータである。「学習意識(成績伸長には努力が大切、等)」の肯定度に着目してみると、学力レベル別には数値に違いが見られず、どの成績層の生徒も意識の差は大きくない。一方、自己効力レベル別には、学習意識の数値に明確な差が見られる。
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学習行動の実践度や宅習時間についても、「今現在の(結果として表れている)学力」【
図1
グラフ右】による差以上に、「自己効力」【
図1
グラフ左】の実感レベルの差によって数値の差が開いている。
ある時点での学力レベルが同一の生徒でも、自己効力を実感できるかどうかで、その後の学力推移に格差が発生することが予測できる。学校生活の中で自己効力を高めることは、生徒の学習に対する意識と行動のギャップを縮め、学力形成の促進につながるのだ。
「何かを成し遂げた体験を中学時代までに持てた生徒が減っているように感じる」「チャレンジする前に簡単に諦める生徒が増えた」といった生徒の変化を受けて、自己効力の実感レベルを引き上げる仕掛けの必要性がより強く意識されるようになりつつある。高1を中心とした導入期の指導においても、学校の指導に対する信頼感や前向きな気持ちを持たせる取り組みの視点が益々重要となっている。
具体的な手法としては、例えば以下のようなアプローチで意識形成を図る取り組みが考えられる。
(1)上級生からの波及効果を活用
自分が3年間学ぶ高校で、身近な先輩がどのような生活を送っているのかを、上級生の言葉で伝えさせる。入学直後のオリエンテーションやLHRなどの場で、上級生と新入生が意見交換する場などを導入するのも有効だ。
(2)保護者への働き掛けの徹底
学校の指導に対する保護者の理解と信頼を得ることは、生徒への大きな波及効果をもたらす。保護者向けシラバスなどを活用して、3か年の指導の流れや学校の指導方針への理解を求める、といったことも必要だろう。合格者登校日など入学式前から保護者と接点を持つ場があるならば、こうした場を通じて早期から学校との関係性を築くことも有効だ。
(3)生徒同士での意見交換の場を意図的に設ける
生徒が互いの考えを交換し、それぞれの良さを認め合うことにより、「自分に対する肯定的な理解」を深めるための仕掛けも有効だ。「入学時の思い」などを書かせる学校も少なくない。その際「お互いの意見を交換し、良かった点を話し合う」という自己開示の取り組みを実践することが相互理解を深め、集団づくりを行う第一歩としては有効なようだ。
こうした生徒への働き掛けは、入学直後のオリエンテーションの場以外でも可能だ。LHRや部活動、学校行事などの位置付けを、「集団形成」という観点から、教師間で共有化しておきたい。
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