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学部に捕らわれない大学院の多様な進路 |
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工学教育の幅の広がりは修士課程以降の大学院においても見られる。
「本学では学部から修士課程に上がる際、卒論の研究室とは違う研究室に所属し、異なる研究テーマに取り組む院生も少なくありません。また、専攻によっては別の学科から進学することもあります。機械系の専攻だからといって機械系の学生だけが進学するのではなく、生命科学や情報科学の学生が入っていくということが、本学に限らずこれからどの工学系学部においても進んでいくでしょうね。大学進学時の学生の進路ミスマッチを解消する機会が、この時点においてもあるわけです」(下河邉副学長)
もちろん、他大学から東京工業大大学院に進学する場合も少なくない。実際、04年5月時点の東京工業大の学部と大学院修士の学生数を比べると、1学年の学生数は学部約1200名に対して修士約1700名。東京工業大の学部生のすべてが東京工業大の修士に進学するわけではないため、他大学からの入学者がかなりの数を占めていることが分かる。また、他大学からの進学者は、現在のところ理工学系の学生が大部分を占めるが、今後は医歯系の大学からの異動もあり得るという。当面は4大学連合が、そのフィールドになるだろう。
「今後は東京医科歯科大との間で、院生の異動は起きるでしょうね。医師の資格を取得した上で本学の大学院で学び、医工の融合領域を研究するということは大いに考えられます。現在でも、私が担当する博士課程の学生は、人工心臓の研究のために月の半分くらいは東京医科歯科大の研究室に通っていますからね」(下河邉副学長) |
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異分野融合の波は人文・社会科学をも巻き込む |
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教員レベルの融合も進みつつある。研究科・専攻の壁を越えた横断的組織として02年に発足した「イノベーション研究推進体」は、研究面の異分野融合を象徴する取り組みの一つだ。大学全体の研究戦略の企画・立案を行う研究戦略室が、ライフサイエンスや情報通信、環境、エネルギーなど分野ごとに領域の重なる研究者を集めて共同研究を行い、産学連携の糧にしていくという。
また、21世紀COEプログラムにおいても、理工系学部の教員と人文科学・社会科学の教員が共同で研究を進めている分野が多い。例えば、04年に採択された「大規模知識資源の体系化と活用基盤構築」では、理工学系の計算工学専攻と社会科学系の人間行動システム専攻などが、共同で大規模な知識資源の体系化と、活用技術に向けた研究を進めている。
「今後益々、教育・研究の両面で異分野融合は進みますし、大学としても細分化しすぎた組織や研究領域の壁を取り外していかなくてはなりません。工学を目指す学生は、学部選択の段階では特定の専門領域に捕らわれることなく、広い視野を持って学問に励んでもらいたいと思います」(下河邉副学長)
一つの専門分野だけを極めるという時代ではなくなりつつある。東京工業大の事例に見られる異分野融合の流れは、科学技術の在り方そのものを映している。 |
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