かつて、何の前触れもなく(こちらが感じられなかったのかも知れないが)、突然登校しなくなった生徒がいた。すぐに家庭訪問をしたが、居留守を使われて接触することはできなかった。本人と直接連絡を取ることができず、話は全くできなかった。仕方がないので、ほぼ1週間に1度くらいであったが、家に行き、呼び鈴を鳴らしては、「来たよ」とだけ言って帰ることを続けた。これを繰り返していくうちに、窓から顔を出す、玄関口まで出るなどを経て、約2か月後、ようやく家の中で話ができるようになった。
この生徒は成績だけでなく、生活のすべてに自信を持てていなかった。この経験から、方法は様々でも「気にしている」というサインを送り続けること、最初から不登校の理由を聞くのではなく、「何か困っていることはないか」「私にできることはないのか」という語り掛けから始めることの大切さを学んだ。
この事例を基に、現任校のスクールカウンセラーと話し合ってみた。個人的には参考になったので、2点内容を紹介しておきたい。
(1)サインを送ることは大切だが、生徒がサインを受け取ったからといって、すぐに、その先に成果を見いだそうとすると失敗する可能性が高い。
(2)「教育」という枠の中だけで不登校を扱うのは難しい。「種を蒔く」気持ちで接することが大切ではないか。
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