Chapter 3
教員需給の動向と進路指導の在り方
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教員需要の高まりで定員規制枠が撤廃 |
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最後に教員採用の展望と、今後の教員志望者に求められる人材像について見てみたい。この問題を考える上で、重要なファクターの一つになるのが教員需給の問題である。
05年3月、文部科学省は団塊世代の教員の大量退職を見据え、教員養成系学部の新設・定員増に関する規制を20年振りに撤廃する方針を告示した。文部科学省・長谷川氏によると「規制撤廃は大学の主体性を尊重する近年の大学改革の大きな流れの一環」と強調しつつ、都道府県教育委員会等から寄せられる声の中に、教員の「質」と共に「量」も確保したいとする要望があることを明かす。
実際、近畿圏では教員不足が表面化しつつあり、小学校教員養成への参入を希望する私立大の増加も予測される(※3)。教員需給の動向に詳しい桜美林大の潮木守一教授の統計によると、教員需要のピークは09年。首都圏では約5500人、近畿圏で約3800人の新たな教員が必要になるが、この数は首都圏・近畿圏の教員養成課程卒業者を一人残らず採用しても足りない数だという(図4)。また、小・中学校における少人数学級の導入・拡大の動きも(※4)、教員の増員を後押しする要素になっているようだ。 |
※3 立命館大は聖徳大通信教育学部と提携し、05年度4月より小学校教員免許を取得できるプログラムを開始した。立命館大の学生は聖徳大の通信教育を利用して教員免許取得を目指すが、体育や音楽などの実技系科目については、聖徳大の講師が立命館大を訪れて授業を行う。
※4 公立小・中学校では、県や市の取り組みとして30、35人学級を導入する動きが進んでおり、文部科学省は、小・中学校で一律40人としてきた学級編成基準の見直しを進めている。 |
▼図4 公立小中学校教員需要推計
(注)離職者は年齢構成からの推計値。教員増減は児童生徒数の増減による増減。
養成数は04年度の教員養成過程入学定員。データは桜美林大・潮木守一教授による推計。
詳細は潮木研究室のHP(http://www.ushiogi.com/juyou.html)参照のこと。
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こうした状況を踏まえ、教員需給の面から起こり得る大学の動きを、東京学芸大・岩田助教授は次のように予測する。
「私立大を中心とする都市部の一般大学に、教員養成課程を設置する大学が増えるでしょう。特に、小学校教員養成についてはビッグバンの状態になるのではないでしょうか。それに応じて国立大学法人では、新課程の定員を教員養成課程に振り向ける動きも顕在化すると思います」 |