ベネッセ教育総合研究所
指導変革の軌跡 京都府立洛北高校「SSH活動」
京都府立洛北高校

京都府立 洛北高校
1870年創立の京都府中学校を前身とする国内屈指の伝統校。創立以来2名のノーベル賞受賞者が輩出。サッカー部や陸上部が全国制覇を遂げるなど部活動でも実績を上げている。04年度、中高一貫教育校として再スタートを切った。
設立●1948年(昭和23年)
形態●共学/普通科(第I~III類
生徒数(1学年)●約970名
05年度進路実績●国公立大には京都大、大阪大、神戸大、京都工芸繊維大、京都教育大、京都府立大、大阪市立大など41名が合格。私立大には同志社大、立命館大、京都産業大、佛教大、龍谷大、関西学院大、関西大、大谷大など延べ317名が合格。
住所●京都市左京区下鴨梅ノ木町59
電話●075(781)0020
URL●http://www1.kyoto-
be.ne.jp/rakuhoku-hs/

京崎秀樹

京都府立洛北高校教頭
京崎秀樹
Kyozaki Hideki
教職歴30年目。洛北高校に赴任して2年目。「思い込みや先入観にとらわれずに自ら真実を確かめようとする生徒を育てたい」

弓削亨

京都府立洛北高校
弓削亨
Yuge Toru
教職歴24年目。洛北高校に赴任して3年目。企画情報部長。物理担当。「自分自身をオープンにして、生徒の本音に迫りたい」

野村康隆

京都府立洛北高校
野村康隆
Nomura Yasutaka
教職歴16年目。洛北高校に赴任して2年目。企画情報部。数学担当。「忍耐と努力を基本として積極的に物事に取り組んでほしい」

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指導変革の軌跡53
その時教師はそして生徒はどう変わったか
京都府立 洛北高校 ---------SSH活動
「洛北サイエンス」を軸に効果的な指導を模索する


「サイエンス」を理念として再スタート
  試行錯誤の中で突っ走った1年――。
  京都府立洛北高校がSSHの指定を受けてからの1年間を、数学科の野村康隆先生は、こう振り返る。
  04年度は、洛北高校の長い歴史の中でも、大きな節目となる年だった。一つは併設の中学校を設置し中高一貫教育校として再スタートを切ったこと。そしてもう一つがSSHの指定だった。
  中高一貫教育校の開設に際し、洛北高校は学校の基本コンセプトとして「サイエンス」を掲げた。「サイエンス」というと一見、理数系に偏った教育を想像しがちだが、この言葉の背後にあるのは、広く学問全般を志向する精神である。京崎秀樹教頭は「サイエンス」に込められた思いを次のように述べる。
  「サイエンスの語源は、ラテン語で知ること、分解すること。すなわち本来の意味は、学問の知識や方法という点にあります。『サイエンス』を基本コンセプトに掲げてはいますが、本校はあくまで普通科の高校です。自然科学だけに偏るのではなく、人文科学・社会科学も含めた幅広い教育を行い、正しい判断力や高い見地に立った洞察力を身に付けさせることを重視しているのです」
  このようなコンセプトを掲げ、学校改革を進める洛北高校にとって、04年4月のSSH指定は、「渡りに船」の出来事だったといえよう。「サイエンス」を機軸とする学校改革の流れの中に、理数教育の充実を後押しするSSHという強力な武器が手に入ったのだ。これを改革に生かさない手はない――。教師たちの士気は一気に高まった。
  だが、SSH指定校になったとはいえ、「サイエンス」の本来的な精神である全人教育の理想を見失ってはならない。SSHの活動を進めるにあたって、洛北高校の教師がまず留意したのも、この点だった。
  「本来的なサイエンスの精神に立ってSSHを進める以上、理科や数学に偏ったSSHであってはなりません。国語や英語、社会など広く人文科学・社会科学にも視野を広げ、言語能力やコミュニケーション能力、プレゼン能力までの幅広い素養を身に付けることが大切だと考えました」(京崎教頭)
  実際、洛北高校ではSSH指定後も数学・理科の単位数を増やしたり、人文科学・社会科学系の教科の授業時数を削減したりはしていない。普通科教育の中でいかにSSHとしての実を上げるか。そのためには、どのようなカリキュラムづくりや教育体制の整備が必要か。教師たちの挑戦が始まった。


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