部活動をやっている生徒が、「なかなか勉強の方に目を向けてくれない」という問題は、部活動の顧問をしているときいつも直面するものだ。
私は、現在吹奏楽部の副顧問をしている。本校の吹奏楽部は総勢120名の大所帯で、全校生徒の5分の1、各学年1クラス分の人数を抱えている。そのため、吹奏楽部の生徒の成績は学校の問題にもなるのだ。そこで、今から述べる方法で何とか解決しようと努力している。
私の基本方針は、「卒業後の進路を考えさせる」ということだ。考えてみると、部活動の生徒は他の生徒と比較して、卒業後の進路について大変不安を持っている。「このままで、自分は大丈夫なのか」「部活をやっていない人と同じように、自分の進路は実現できるのか」など。私は、この不安を逆に利用して勉強に目を向けさせている。
具体的には次のような方法だ。それは「部員への声かけ」「進路面談」「先輩に相談させる」。
まず、「部員への声かけ」だが、部員が一番進路に対する不安を持つのは、試合・大会といった目標が一旦無くなる時期だ。この時期には、練習中の休憩や終了後に一人に焦点を定め、声をかけている。「君は将来どんな仕事をしようと考えているの?」「どんなところに進学しようと考えているの?」など、あくまでも世間話をするように声をかける。そのときは具体的なアドバイスはしない。ただ、最後の一声は「そうか。先生も君の進路について調べておくから、君の都合のいい日にゆっくりと話そうか」だ。この言葉で、8割の生徒が相談に来るようになる。
このように、ほぼすべての生徒に声をかけたら、いよいよ「進路面談」だ。部室にポスターを張り、事前に告知して1週間ほどで行う。そのときは、具体的な成績状況以上に、これから引退までのスケジュールを中心に話す。つまり、「これから、勉強ができるのはいつなのか」「いつ勉強を頑張らなくてはいけないのか」「何の勉強をしなくてはいけないのか」など、自分の進路を実現するために必要な勉強は何かを、部活動の大会日程、学校行事、入試日程などのスケジュールと重ね合わせて、考えさせるようにするのだ。普段、大会日程を気にしながら日々の練習をやっている生徒ほど、スケジュールを確認しながらのアドバイスは効果があるように思える。
最後の一言は「そうだね。今しか勉強できないよね。もし、君が希望している全国大会出場を考えると、今からできることはやっておかなきゃだめだね。じゃあ、こんな勉強をしてごらん…」だ。大体、このような声をかけると生徒は鼻息荒く、胸を張って相談室を出ていく。
さて、今まで述べた「進路相談」だが、これは2年の冬に実施する。3年生になると、この効果が生きているのか、部員は目の色を変え、勉強に取り組んでいるようだ。では、1年生、2年生(冬の時点まで)には、どうするのか。「声かけ」はするが、「進路相談」は2年の冬までしない。
生徒には言う。「進路相談は冬以降の2年生の特権。そのときまで我慢しなさい。だから君(1・2年生)は、先輩に相談しなさい。○○先輩は君と同じように悩んでいたから、いいアドバイスをもらえると思うよ」。このようなことを言うと、2年の冬の「進路相談」に期待を持つし、先輩のアドバイスにも素直に耳を傾けるようになる。もちろん、相談を持ちかけられる部員には事前に、質問内容やアドバイスの仕方の指導、そして本人が悔いにしている勉強不足などを話すように頼んでおくのだ。そして、相談が終わったら両方から状況を聞くようにしている。
現在はこの三つの方法で、何とか「部員の勉強意欲を引き出す」手伝いをしている。
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