ベネッセ教育総合研究所
現場と共に考えるQ&A 学習と部活
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現場と共に考える 生徒指導Q&A
学習と部活
学習と部活動を両立させる効果的な仕掛けはあるのか?


Q:どうやって学習と部活動を両立させるのか
 本校には全国レベルの実力を持つ部活動がいくつかあり、部の活躍が学校全体に活気をもたらしています。
  現在、私はバレーボール部の顧問をしていますが、部活動に力を入れるあまり、学習活動が疎かになっている生徒が多いことが気にかかっています。HRで呼びかけたり、特に成績不振の生徒には声かけをするなどしていますが、なかなか効果が上がりません。
  大学進学を目指している者は少なくないのですが、学習と部活動を両立する余裕を、時間的にも気持ちの面でも持てていない様子がうかがえます。
  もっとも、学習一辺倒になり、部活動がおろそかになってしまっては、試合で勝ち進めません。部活動への活力を損なうことなく、生徒の気持ちを学習活動に向ける方法はないものでしょうか。お知恵をお貸しください。
男性。教職歴7年目。
A:絶えず声をかけ卒業後の進路を意識させる
 部活動をやっている生徒が、「なかなか勉強の方に目を向けてくれない」という問題は、部活動の顧問をしているときいつも直面するものだ。
  私は、現在吹奏楽部の副顧問をしている。本校の吹奏楽部は総勢120名の大所帯で、全校生徒の5分の1、各学年1クラス分の人数を抱えている。そのため、吹奏楽部の生徒の成績は学校の問題にもなるのだ。そこで、今から述べる方法で何とか解決しようと努力している。
  私の基本方針は、「卒業後の進路を考えさせる」ということだ。考えてみると、部活動の生徒は他の生徒と比較して、卒業後の進路について大変不安を持っている。「このままで、自分は大丈夫なのか」「部活をやっていない人と同じように、自分の進路は実現できるのか」など。私は、この不安を逆に利用して勉強に目を向けさせている。
  具体的には次のような方法だ。それは「部員への声かけ」「進路面談」「先輩に相談させる」。
  まず、「部員への声かけ」だが、部員が一番進路に対する不安を持つのは、試合・大会といった目標が一旦無くなる時期だ。この時期には、練習中の休憩や終了後に一人に焦点を定め、声をかけている。「君は将来どんな仕事をしようと考えているの?」「どんなところに進学しようと考えているの?」など、あくまでも世間話をするように声をかける。そのときは具体的なアドバイスはしない。ただ、最後の一声は「そうか。先生も君の進路について調べておくから、君の都合のいい日にゆっくりと話そうか」だ。この言葉で、8割の生徒が相談に来るようになる。
  このように、ほぼすべての生徒に声をかけたら、いよいよ「進路面談」だ。部室にポスターを張り、事前に告知して1週間ほどで行う。そのときは、具体的な成績状況以上に、これから引退までのスケジュールを中心に話す。つまり、「これから、勉強ができるのはいつなのか」「いつ勉強を頑張らなくてはいけないのか」「何の勉強をしなくてはいけないのか」など、自分の進路を実現するために必要な勉強は何かを、部活動の大会日程、学校行事、入試日程などのスケジュールと重ね合わせて、考えさせるようにするのだ。普段、大会日程を気にしながら日々の練習をやっている生徒ほど、スケジュールを確認しながらのアドバイスは効果があるように思える。
  最後の一言は「そうだね。今しか勉強できないよね。もし、君が希望している全国大会出場を考えると、今からできることはやっておかなきゃだめだね。じゃあ、こんな勉強をしてごらん…」だ。大体、このような声をかけると生徒は鼻息荒く、胸を張って相談室を出ていく。
  さて、今まで述べた「進路相談」だが、これは2年の冬に実施する。3年生になると、この効果が生きているのか、部員は目の色を変え、勉強に取り組んでいるようだ。では、1年生、2年生(冬の時点まで)には、どうするのか。「声かけ」はするが、「進路相談」は2年の冬までしない。
  生徒には言う。「進路相談は冬以降の2年生の特権。そのときまで我慢しなさい。だから君(1・2年生)は、先輩に相談しなさい。○○先輩は君と同じように悩んでいたから、いいアドバイスをもらえると思うよ」。このようなことを言うと、2年の冬の「進路相談」に期待を持つし、先輩のアドバイスにも素直に耳を傾けるようになる。もちろん、相談を持ちかけられる部員には事前に、質問内容やアドバイスの仕方の指導、そして本人が悔いにしている勉強不足などを話すように頼んでおくのだ。そして、相談が終わったら両方から状況を聞くようにしている。
  現在はこの三つの方法で、何とか「部員の勉強意欲を引き出す」手伝いをしている。

男性。教職歴8年目。
A:両立させてこそ一人前という意識付けが大切
 私は学級担任であり野球部の顧問であるが、今回は野球部の顧問の立場で答えたい。
  まず心掛けていることは、入学直後の指導を徹底することである。勉強と部活動の両立をしてこそ一人前であるという意識を、その時期にいかに植え付けられるかが重要だ。入部当初は勉強時間の確保のために早く帰らせたり、部活動と勉強とのメリハリが付けられるような時間の使い方を教えたり、部内で勉強会を開いたりして、この部では勉強もしっかりとやるのだという意識を持たせる。また、本校には、全国レベルの部がいくつかあり、主力となっている生徒は意識の高い生徒が多い。そのような先輩を模範として勉強と部活動の両立をしようという話をしたり、文武両道を成し遂げたOBの受験体験記を読ませたりすることで、生徒の内面に訴えかけている。勉強を強制的に意識させると共に、他の部の状況や先輩たちの考え、進路先を意識させるのである。
  また、生徒は目先のことだけしか考えていないことが多いので、将来を考えさせ、部活動だけでは将来の選択肢が広がらないことを意識させるのも効果的であると思う。更に、部内での勉強会も定期的に行うが、合宿や遠征においても勉強時間を確保したり、試験で赤点を取った部員は勉強のために部活動を休ませたりもした。勉強会のようなものは、生徒は当初嫌がるのだが、成果が出てくることで、徐々に前向きに取り組むようになっていった。内面へ訴えかけながら強制的に勉強をやらせる機会も設けて、両立することの大切さを意識させていくことが重要なのではないか。
  最後に一言。両立の指導をうまく進めるためには、学校全体の協力が大前提だと思う。幸い本校では、学校全体が文武両道を推進しようとする雰囲気があり、指導がしやすい。部活動顧問だけが頑張ってもうまくいかないし、逆も同様だと思う。
男性。教職歴7年目。


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