まず、図1は経済・経営系学部の進学動機をまとめたものだ。これを見ると、全系統の平均と比較して、「学問研究」「専門的な知識」など知的・実利的な学びを志向する意識が低い反面、「安定した職業には学歴が必要」「社会に出るのが不安」「友人も行く」「何となく」など、学歴尊重や同調志向、モラトリアム志向などが強いことが分かる。
経済・経営系学部は就職の際、一般的に「つぶしが利く」学部と言われてきた。幅広い分野の業種・職種に対応できるという意味だが、反面、将来の職業を決めかねている学生にとっては「とりあえず経済学部に入り、就職は3年後に考えよう」という考えを招きやすい。大学入学前の目的意識の醸成、入学後のモチベーション維持が困難であると言われる背景が、本データからうかがえる。
こうした学生の意識を向上させるために、低学年次からの専門科目履修を可能とするカリキュラム改編や、導入期ゼミの設置等を進める大学が増えている。例えば、神戸大経営学部では98年の大学院重点化に伴い、従来の経営学科・会計学科・市場システム学科・国際経営環境学科の4学科を経営学科の1学科に再編。更に、専門科目を専門性のレベルごとにI~III群に分類し、1年次から段階的に経営学の専門知識を身に付けられるようにした。
神戸大学ではそれまで、4年の学部教育を前半の1年半と後半の2年半に分けて、前半を全学共通の教養教育中心、後半を経営学の専門教育中心に展開してきた。しかし、98年の改組で、カリキュラムを前記の3群構成に変え、1年次から経営学の専門科目を学べる体制を整えたのである。その背景を、神戸大大学院経営学研究科長の櫻井久勝教授は、次のように述べる。
「従来は、前半の1年半を教養教育中心に充ててきましたが、高校の延長のような勉強に対して、近年、学生アンケートを通して『せっかく経営学部に来たのだから、早い時期から専門的な学習をしたい』という要望が強くありました。そこで、必修科目として経営学基礎論、会計学基礎論などの科目を設定し、学生のモチベーションの維持・向上を図っているのです」
こうした、学生の専門志向に対応したカリキュラム改編を実施している大学は少なくない。一橋大商学部でも、数年前にカリキュラムの改訂を行い、低学年から専門科目を学べるようにした。商学を学ぶ上で必要な「○○通論」と呼ばれる通論系の必修科目の多くを選択制にし、幅広い学問体系の中から基本的な考え方や思想を採り入れて、学生の興味・関心に合った学びを促しているという。
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