現場と共に考える生徒Q&A 推薦合格者への対応

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現場と共に考える 生徒指導Q&A

推薦合格者への対応

合格後も学習意欲を維持するためには?

Q. 推薦・AO合格者をどのように指導するか

 毎年秋も深まる頃になると、私立大を中心に、推薦入試やAO入試で合格する生徒が出てきます。本校では、毎年このタイミングで学年集会を開くなどして、3年生の「受験モード」への転換を図っています。  しかし、問題なのは、合格してしまった生徒が、ともすると学業を疎かにしてしまいがちなことです。定期テストの成績が急激に下がったり、授業中の態度が露骨に悪化する生徒が、残念ながらしばしば見られます。また、そうした生徒の影響で、クラスの雰囲気が悪化してしまうケースも皆無ではありません。  近年は、大学側が課題を出すなどして配慮してくれてはいるのですが、決め手は未だに見つからない状況です。私は今年初めて3年生の担任を持ったのですが、先行きに不安を抱えています。何か良い指導法がありましたらご教示ください。

男性・教職歴6年目

A. 大学に入った後のことを考えさせる

 正攻法であるが、やはり高校での学習が、大学で学ぶ基礎になることをきちんと意識させるしかないと思う。  私が理科の担当をしていることもあり、自分のクラスでは、特に理系の生徒に対して「授業を疎かにしていると大学に入ってから困る」という点を繰り返し説いている。推薦入試やAO入試で合格した生徒の多くは「学力的に他の生徒より劣っているのではないか」と感じている部分があるので、個別面談などを通じて本質論を語って聞かせれば、大体は理解してくれる。また、場合によっては、大学に入ってから、授業についていけずに中退した先輩の話なども聞かせている。もちろん、個人名を出したりはしないが、実際に起きた話には現実味があり、生徒も危機感を持ってくれるようだ。  ただし、いくら口を酸っぱくしてこうした話をしても、1回の個別面談だけで終わってしまうと、その後のモチベーションが続かない。そこで、私の場合は、「一般入試で受験するクラスの仲間と一緒に、最後まで特編授業に出る」あるいは「センター試験を受験する」といった目標を、個別面談を行う際に必ず生徒に自主申告させるようにしている。その上で、「きみたちの努力いかんで、クラスの雰囲気が変わるんだよ」と言って聞かせれば、大概の生徒はセンター試験が終わるまでは、クラスのメンバーのために頑張ってくれる。

男性・教職歴11年目

A. 学校行事で活躍の場を与えクラスの一体感を生む

 恐らくこの問題は、教師がその時だけ頑張って解決できるようなものではない。むしろ、普段のクラス運営がどれだけうまくできているかが、問題の解決に向けた第一歩であると思う。推薦・AO入試で合格した生徒たちが「仲間のためにできることをやろう」と思えるようなクラスの雰囲気づくりが担任の役割ではないだろうか。  そうした観点から私が意識しているのは、秋の文化祭や体育祭を、クラスの求心力を高める行事としてうまく盛り上げることだ。この時期の学校行事は、一般的に受験の障害と思われがちだが、受験に向けてクラスの一体感を高める契機として活用できれば、むしろプラスの効果を持つ。特に、推薦・AO入試に出願するような生徒は、高いリーダーシップを発揮できる生徒が多いので、後輩の応援指導や看板制作といった役割を積極的に与え、「クラスの他のメンバーのために頑張っている」という意識を持たせるようにしている。残りの高校生活を「消化試合」のように送らせないためには、最後までクラスの一員として活躍できる場を与えることが必要ではなかろうか。  こうした手法は普段の学校生活の中でも十分に可能だ。本校では、学校行事に限らず、校内の整備や自転車置き場の整備なども、「お世話になった学校に恩返ししなさい」と言って、推薦・AO入試合格者に行わせている。また、同窓会役員をさせたり、アルバムのクラス編集委員・ビデオレターの編集なども行わせている。  とは言え、これらの役回りをいきなり頼んでも「押し付け」と取られてしまう。そこで、推薦・AO入試受験者には、受験が決まった段階でそのことは伝えておく。「クラスの雰囲気が悪くなったら、自分たちのせいだ」と生徒が思えるようになれば、他の生徒との間でトラブルが起きることはないのではなかろうか。

女性・教職歴19年目

A. 英検取得を目標に学習に向かわせる

 本校の推薦・AO入試合格者に関しても、同様の問題が起きている。特に「勉強は試験のためにしていた」という生徒ほど、合格した途端に学習モチベーションを失う傾向が顕著なようだ。  そこで本校では、推薦入試やAO入試で合格した生徒に対しては、卒業までに英検2級の取得を目指して学習させることにしている。英語力は文系・理系を問わず大学で必要な力であることを説明すれば、意外にすんなりと生徒も受け入れてくれる。具体的な目標が見えることが、生徒の学習意欲の喚起につながりやすいようだ。もちろん、実現不可能な目標を与えては、生徒がいい加減に取り組んでしまうので、それまでのテストの成績などを踏まえながら、準2級に目標を下げる場合もある。学校特性によっては、もっと多様な目標設定を考えた方がよいかも知れない。  こうした方法はいわゆる「正攻法」ではないし、他教科においては難しい面があるかも知れない。しかし、推薦・AO入試合格者への対応をいつまでも担任任せにしていては打開策は見つからない。教科担当の立場からも、何らかのフォローができないか考える時期に来ていると思う。

男性・教職歴12年目

A. 講演会を利用し大学人から直に語ってもらう

 この時期本校では、1年生の文理選択に向けて、大学の教員を招いた講演会を実施している。これまでは1年生のみの参加であったが、昨年からは、2、3年生も参加させている。  事前に講師の方には「3年生の最後まで勉強し続ける意義を説いてください」とお願いしておき、暗に推薦・AO入試合格者へのメッセージが伝わるように工夫した。「高校で基礎ができていないと大学で困る」という大学人の発言には、さすがに生徒も重みを感じたようだ。  まだ効果を検証できる段階ではないが、やはり大学人から学習し続ける意義を説いてもらうのが、一番効果的なように思う。

男性・教職歴14年目

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