現場と共に考える生徒Q&A 中だるみの防止策

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現場と共に考える 生徒指導Q&A

中だるみの防止策

多くの学校が課題とする「中だるみ」の処方箋は?

Q. 中だるみが3年次のスタートの遅れに影響している

 本校では秋の文化祭が終わると、ややもすると学校全体に「中だるみ」の空気が蔓延してきます。学習時間の減少、部活参加率の低下といった問題に加え、提出物の遅れや服装の乱れなどが、特に2年生を中心に目に付くようになってきます。学年集会を開くなどして、意識の引き締めを図ってはいるのですが、なかなかうまくいかない状態です。私は本校に赴任して3年目ですが、どことなく教師の間にも「学校行事が重なる時期でもあるし、ある程度はやむを得ない」という空気が漂っているように思います。
  しかし、本校の進学実績がなかなか伸びない理由の一つが、「3年次のスタートダッシュの遅さ」にあることを考えると、このまま中だるみを放置しておくのも考えものです。何かよい指導方法がありましたらご教示ください。

教職歴11年目。男性。

A. 保護者の協力を求めるのが効果的

 本校でも2年生の中だるみの対応には手を焼いている。以前から、特にたるんでいると思われる生徒には個別面談などで対応してきたが、なかなか効果が上がらなかった。そこで数年前から本校では、個別面談に先立ち、すべての生徒について家庭訪問を実施することにした。
  その際に重視しているのは、生徒の生活習慣の確立に保護者が大きな役割を果たしていることを、保護者自身に意識してもらうことだ。本校の場合、毎日の学習時間や生活時間帯を記す『学習の記録』というプリントを生徒に書かせているが、1学期のゴールデンウィーク明けや、2学期の文化祭直後などのポイントでは、保護者にもコメントを書いてもらっている。家庭訪問と合わせてその旨を伝えることで、意識付けが効果的に行えるようだ。
  また、家庭訪問の際には、生徒の勉強部屋をできるだけ見せてもらうようにしている。物が散らかっていたり、学校からの配付物がたまっていないかどうか…など、中だるみのサインを保護者と一緒に見るようにしている。また、同時に生徒の家庭での生活状況を聞いておけば、2学期になってから生徒と個別面談を行う際にもその情報が生きてくる。「この生徒は中だるみ状態になったら、両親から働きかけてもらった方がいいな」あるいは「教師がキツく言った方がうまくいくな」といった感覚は、家庭訪問を行ってこそ得られるものだと思う。

教職歴18年目。女性。

A. 今の自分に点数を付けさせて自省を促す

 1年生はともかく、2年生ともなれば1年後に受験が控えていることは自覚している。私の経験に照らしても、「中だるみ」状態に陥った生徒の多くは、本心ではダラけたムードに歯止めをかけられないことにジレンマを感じている。したがって、適切な対応をする鍵は、生徒たちの潜在的な問題意識をいかに顕在化させるかにある。
  そこで私は、生徒がダラけがちな秋口に個別面談を行って、生徒に「自己反省」を行わせている。その際には、ただ漠然と「最近どうだ」とか「最近たるんでいないか」といった聞き方はしない。その代わり「キミの理想の状態を10点満点としたら、今のキミは何点くらいだろう」という聞き方をしている。教師が反省することを押し付けては、生徒が反発するだけだ。「点数化」というステップを最初に踏ませることで、生徒自らが課題を発見するように仕掛けるわけだ。
  こういう聞き方をすれば、大体の生徒は「自分としては○点くらいです」と語ってくれる。こうなればしめたもの。すかさず「じゃあ10点満点でないのはどうして?」と生徒に聞いてみる。きっと、生徒の方から「提出物がきちんと出せていない」「家庭学習の時間が少ない」などと語ってくれるだろう。こうしたきっかけがあれば「じゃあキミの課題は、□□することだね」「0点じゃないからまだ大丈夫。一緒に頑張ろう」といったアドバイスも与えやすい。教師が全部答えを言ってしまわずに、あくまでも生徒自身に中だるみを自覚させ、脱出するためのアクションを語らせるのだ。
  このような面談をするようになってから、大きく生活ペースを崩す生徒が減ってきたように思う。また、何より「先生に一方的に怒られた」と思う生徒が減ったことが嬉しい。中だるみを根本から解決するには、生徒の内面にある課題を一緒に掘り起こしていくアプローチが重要なのではないかと思っている。

教職歴15年目。男性。

A. 勉強する3年生の姿をうまく演出する仕掛けづくりを!

 2年生の中だるみを解消するには、直接2年生の生徒に訴える方法もあると思うが、相談者の先生が感じておられるように、それだけでは限界があると思う。私も正攻法だけでは難しいと前々から感じていたので、今年から発想を変えて「3年生の後ろ姿を見せる」という方法を試してみた。
  本校では、毎年9~10月になると、3年生の中でも意識の高いグループが、図書室の一角を占領して自主学習を始めるようになる。生徒の間で「図書室詣で」と呼ばれる一種の伝統のようなものだ。私は今年2年生の担任をしているのだが、放課後に調べ学習と称して、生徒を図書室へ連れて行った。そして勉強に打ち込む3年生の姿を見せながら、「3年生のこの時期になったら、もう受験勉強を始めていなければ間に合わないよ」と、それとなく生徒に伝えてみた。全員とまではいかなかったが、何人かの生徒が「自分も頑張らなければ!」と、気持ちを新たにしてくれたようだ。
  相談者の先生の学校にも、おそらく3年生特有の伝統のようなものがあるのではないか。些細なものでも、それを下級生に向けてうまく演出できれば、たるんだ空気を引き締めることができるのではないだろうか。

教職歴10年目。女性。

A. 学校行事の実施時期を見直してみる

 文化祭、体育祭といえば秋に行うものという固定観念があるが、本校では現行課程に移行した03年度から、体育祭を6月に、文化祭を9月に行うことにした。相談された先生の学校と同じく、本校でも以前はすべての学校行事が終わるまで、3年生が受験モードに入れなかったが、03年度以降は比較的スムーズに受験体制に入っている。
  もっとも、このような方法は一種の「荒業」である。校内では相当の議論の積み上げが必要だったし、3学期制を2期制にするといった改革も必要とした。すべての学校でうまくいく方法だとは思えないが、参考案の一つにでもなれば幸いである。

教職歴22年目。男性。

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