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集団をより高く、そしてより個にも厚く |
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一宮高校のSSH事業の一つに、名古屋大の研究室を、3年生30名が8月に2泊3日の日程で訪問、研究・レポート作成を行うプログラムがある。04年度は同じSSH認定校の愛知県立岡崎高校と合同で実施した。
「本校のSSH事業も、3年次になると希望者による課外活動にもかなりウェートが置かれるようになります。夏休みに実施されるこの合同特別課外活動もその一つです。やはり実際に研究の現場を訪れるというのは、夏休みの貴重な時間を使う価値のある、意義深い経験になるようです」(山崎武嗣先生)
第一線の研究者に求められる素養に、「他者と協力して研究に取り組む力」がある。学校枠を超えたグループで納得いくまで議論することで、生徒がそれに気付く場としてもこの取り組みは機能する。このプログラムの生物分野では、宿泊所でのディスカッションや翌日の発表会に、両校生徒が学校の枠を超えて意欲的に取り組む姿勢が見られた。大学での主体的な研究を疑似体験させることに見事に成功したのだ。
「加えて、大学のスタッフにはマンツーマンに近い形で指導に当たっていただける。世界的な研究者にも一緒に実験に取り組んでいただけたりする。受験を前にして将来の目標を再確認し、学びへのモチベーションを高めるという意味でも最適の環境です」(高村裕三朗先生)
一宮高校では、SSH認定最終年度を前に、2年間をどのように評価しているのだろうか。
「SSH事業全体の精緻な評価は今後、時間をかけて行うべきですが、現段階で言えることは、生徒の数学、理科、そして英語の基礎学力が全般的に向上していること、日々の授業の中でも生徒のプレゼンテーション能力が高まっていることなどです。また、成績面だけで進路決定するのではなく、自己の興味・関心や適性を十分認識した上で、志望を決める生徒が増えています」(内藤校長)
更に「生徒が“夢中”になる瞬間を数多く見られたこと、生徒が内に秘める大きな力を改めて認識できたこと」(山崎先生)や、「教師の教科指導力や専門性の着実な向上」(田中教頭)など教師が得たものも極めて大きい。
大きな集団の底上げを図るという目標にチャレンジしてきた一宮高校は、理数の能力が高く、極めて強い興味・関心を持つ生徒に今まで以上に対応できるよう、そして生徒の学習スタイルや思考パターンまでを含めた生徒の内面で起こる「継続的な変化」の検証に向けて、最終年度のプログラムを磨き続けている。 |
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