真のリーダー育成を目指して 盛岡第一高校の考える人材育成



「Think Globally Act Locally」

 
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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大学、社会で伸びる「素地づくり」が高校の役割

――お話をうかがうと、人格的な陶冶を図って、生徒が「化ける」のを待つのが盛岡第一高校の指導スタイルのように感じられます。その先にあるのが育成すべきリーダー像かと思うのですが、具体的にはどのような人材像を描いておられますか。

  「リーダー育成」と言うと、どうしても政治家や官僚、企業エリートを育てる教育に特化するイメージがありますが、本校はそうした教育を志向しているわけではありません。むしろ、今後の社会情勢を考えた場合、「リーダー」の意味はもっと広くて然るべきだと思います。例えば、地域の経済界をリードする企業人や、離島医療の充実に取り組む医師なども、必要とされるリーダーですよね。活躍の場や分野は違っても、それぞれ主体的に活躍できるフィールドを持っている人材を、本校では育てたいと考えています。私が好んで使う言葉で言えば「Think Globally Act Locally」を実践できる人材を育てたいということですね。

――なるほど。リーダーの意味は多義的なわけですね。

  ただ、ここで注意しなければならないのは、地域や専門領域に完全に埋没してしまっては真の「リーダー」とは言えないことです。しっかりと軸足を置くフィールドは持ちつつ、国際環境や世界規模の業界動向の中で、自らを位置付ける座標軸を持つことが、これからの時代のリーダーには重要です。私が生徒に繰り返し言っている「Missionを自覚しろ」というのは、まさにそのことなんです。本校には、各学年のスローガンとして「早く染まれ(1年)、必死にしのげ(2年)、夢を持ってもがけ(3年)」というのがあるのですが、その時々に、置かれた状況を自覚しながら生徒に3年間を送らせたいという思いもあるんです。

――リーダー育成といっても、高校現場で行う指導に落としていくと、意外に普遍的な指導になりそうに思えます。

  そうですね。よく言われるように、「リベラルアーツ」的な資質・能力をきちんと育むことこそ、高校現場ができる最も現実的なリーダー育成なのではないでしょうか。以前、本校の先生方に、育てたい生徒像についてアンケートを取ったところ、受験に関わる言葉は全く出ず、「常識人を育てたい」「何事にも熱中できる人間をつくりたい」「思いやりにあふれた人間を育てたい」といったごく一般的な意見が出ました。また、大学の先生方とお話をしても、極端に特殊な能力・資質を求められることはまずありませんよね。高校段階で行うべきリーダー育成教育とは、大学へ進み、社会に出てから見ごたえのある花が咲くように、生徒の持つ「可能性の種子」に十分栄養を与えて、その素地をつくっていくことだと思います。そのためにも盛岡第一高校は、「進化しつづける伝統校」としての使命(Mission)を、果たしていかなければならないと思います。


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