特集 「完全新課程生」をどう育てるか
浅川 典善

▲静岡県立藤枝東高校

浅川 典善

Asakawa Fumiyoshi

教職歴24年目。同校に赴任して8年目。教務主任。国語担当。「言葉を使って抽象的な世界を渡り歩ける思考力を身に付けてほしい」

沢井 邦央

▲三重県立上野高校

沢井 邦央

Sawai Kunio

教職歴27年目。同校に赴任して10年目。1学年主任。英語担当。「いかに生徒の『やる気』を引き出すか、日々考えています」

後藤 浩利

▲岐阜県立多治見北高校

後藤 浩利

Goto Hirotoshi

教職歴27年目。同校に赴任して7年目。地歴公民担当。進路指導主事。「大きな夢を実現させるには小さな努力の積み重ねが大切」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 17/20 前ページ  次ページ

【座談会】

「完全新課程生」の今後の指導を探る

 データや各校の事例から、05年度1年生は、2、3年生と比較しても着実に変化しており、どうやらこれまでの指導を見直す必要がありそうだ。
  今後の対応の方向性を模索すべく、事例校として取り上げた3校の先生方に、「完全新課程生」に対する実感を、話し合っていただいた。

「他力本願」的な生徒の増加

―03年度新課程への移行から、今年度で3年が経ちます。03年度当初は「学習習慣が身に付いていない」「基礎学力が不足気味」「精神的に幼い」など、生徒の変化が取り上げられていましたが、05年度生についてもその傾向は基本的に変わっていないのでしょうか。

浅川 そうですね。私の印象としては、05年度の「完全新課程生」については、そうした傾向を示す生徒が更に増えたように感じています。
  例えば、悪気はなくて、うっかり宿題やプリントを忘れてきたとか、前日の授業内容を忘れてしまい、授業の流れに乗れないとか、ちょっと前であれば気に留めなかった行動が目立ってきました。
「地域の拠点校と言われる学校でも、ここまで来てしまったのか」というのが実感です。学力的な問題よりも、むしろそういった「確かめられない学力」の変化の方が気になっています。

後藤 今のお話は、まさに生徒が幼くなったという部分ですよね。本校でも進路決定がなかなかできない生徒が増えているという問題が起きています。04年度まで本校では、「就きたい職業をまず見つけ、それを実現する方法として進路を考えさせる」というアプローチで進路学習を組み立てていたのですが、どうもそれがうまく機能しなくなってきました。大学を卒業して社会に出る7~8年後を、今の生徒は非常に遠い未来のように感じてしまうらしく、具体的なイメージを持てないんです。そこで、05年度から「大学調べ」や「学問調べ」といった、より身近な未来から進路意識を育てていくアプローチにプランを変更しました。1年次のうちになんとか文理選択を済ませなければならないだけに、状況は厳しいですね。

沢井 私が感じるのは、何をするにせよ、「他力本願」的な発想の生徒が増えていることです。本校では2年前から、新入生オリエンテーションの中で学習ガイダンスを実施しているのですが、それでもなかなか学習に向かわない生徒が見られます。生徒には「先生は君たちを水場に連れて行くことはできるけど、最後に水を飲むのは君たちだよ」などと語っていますが、反応は今ひとつですね。
  また、授業をしていて思うのは、「目の肥えた観客」みたいな生徒が見られることです。私は英語を担当しているのですが、先日、授業アンケートを取ったところ「先生の英語は日本語英語です」という感想を書いた生徒がいました。ALTが入った中学校の授業で耳が肥えている生徒たちですから、それはそれで正しい指摘なんです(笑)。ところが、実際に流暢な発音ができる生徒が多いかというと、必ずしもそうではない。どうも、授業を劇場のように鑑賞しているだけで「自分もうまく発音できるようになろう」という意欲が弱いようなんです。学びに向かう意欲を育てるのが、年々難しくなっている印象があります。


  PAGE 17/20 前ページ 次ページ