――IT社会の現代では、インターネットで多くの知識が簡単に手に入るからそれでよいという人もいます。
インターネットで知っただけで、教養として身に付くわけではありません。大切なのは情報を体系化し、知識や教養として自分に取り込むことです。その方法を学ぶのが学校であり、教育なのではないでしょうか。
リーダーたらんとする若い人は、夏目漱石を読んだり、俳句をつくったり、絵を描いたり、楽器を弾いたり、スポーツをしたりすることが必要です。キリスト教や仏教も勉強しなければなりません。また、自分と似たような人だけではなく、いろいろな人と接した方がよいでしょう。私は、違う分野で活躍している人、職業が異なる人と、できるだけ多く会うようにしています。同じ科学者と話すよりも、断然楽しいですし、触発されることが多いからです。
リーダーになるために必要なことは、学校以外で学ぶ部分が大きいのです。高校時代までは、人生80年を生きるための知恵や技といったものを磨いていってほしいと思います。
――子どもにとっては、教育者である先生との出会いは大きいですね。
私は、小学校から大学まで本当に良い先生に恵まれました。高校時代には、漢詩を教えてくれる数学の先生がいました。生徒たちが前に出て黒板に答えを書いているとき、その先生は後ろの黒板に「少年易老学難成」と書くわけです。「あんまりのんびりしていると、すぐに私みたいに年寄りになりますよ」と。映画の話をよくする英語の先生もいました。面白いから生徒は授業を聞くわけです。教師は教える技術ももちろん必要ですが、それ以上に人間性が大切なのではないでしょうか。
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