――一宮高校は「質実剛健」を校訓に、県の拠点校としてコンスタントに高い進学実績を上げ、地域から厚い信頼を得ています。一宮高校が育成したいリーダーとは、どのような資質を持った人材なのでしょうか。
斎藤 未来のリーダーは、今の社会を形づくる私たち大人を乗り越える存在にならなければなりません。教えられたことだけをしていたのでは、いつかは壁に突き当たる。教師の指導から素直に学ぶことも大切ですが、何でも鵜呑(うの)みにせず、「それは本当か」と自分に問いかけながら理解する姿勢を養うことが大切です。
細川 周囲の信頼を得ることもリーダーには欠かせない条件だと思います。リーダーは周囲の人に資質を認められて、初めてなれるもの。それは、社会人として幸せなことだということを、生徒にも理解してほしい。
水谷 近年は、医療現場などでも見られるようにチームワークが大切になってきています。周囲からの信頼と支援がなければ仕事をスムーズに進めることはできません。また、必ずしも人の上に立って周りを引っ張るだけではなく、ある任務ではリーダーを、別の任務ではフォロワーを務めるというように、場面に応じて柔軟に自分の役割を認識し、動ける力も求められるでしょう。置かれた状況の中で周囲を巻き込んでいく力がリーダーシップであり、そうした力を養うことが、本校のリーダー育成の主眼といえます。
――学習指導だけでなく部活動や行事も積極的に奨励し、「文武両道」を理念で終わらせていないのも、そうした人材を育成する上で重要だと考えているからでしょうか。
山崎 部活動や学校行事を通して上下関係やチームワークを経験することは、将来、社会で活躍する上で貴重な財産になります。本校では9割の生徒が3年生の春まで部活動を続けますし、毎年9月にある学校祭は3年生主導で行います。入試結果だけを求めるならば、行事の削減が考えられます。しかし、入試結果よりも、そうした体験を積ませることの方がリーダーの育成には欠かせませんし、その経験は人生のどこかで必ず生きてくると思います。
堀江 本校のポリシーとして、行事はたとえ縮小しても廃止することはありませんし、レベルも下げさせません。短期で集中して行事に取り組み、終了後はすぐに受験モードへと切り換える。そうしたメリハリが大切です。毎年2月には市民会館を借りて大規模な予餞(せん)会を行います。後輩が感謝の気持ちを込めて先輩を送り出し、3年生もそれを受け止めて大学で頑張る。学校行事はチームワークや達成感を体験するためだけでなく、豊かな心を育むためにも欠かせないのです。
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