Closing Interview SELHiがもたらしたもの
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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教師自身が自分を磨き続ける向上心を持つこと

―日本の英語教育の現状をどのように見ていますか。

  今や、英語が必須の言語であるとの思いは、多くの国民が共有していることでしょう。そうした状況下において現在の英語教育の問題点は、「どの時期に、どのレベルまで英語の力を到達させるのか」という具体的なビジョンが欠けていることです。
  例えば、小学校では簡単な挨拶や好き嫌いの表現、中学校では正式な自己紹介や道案内、高校では易しい物語の読み書き…など、それぞれの段階で明確な到達目標を設定すれば、必要な時間数や教材などを定めることができます。しかし、現状では、具体的なビジョンが曖昧であるために、着実に能力を積み重ねることができないのです。
  更に、近年、英語教育における小学校と中学校、中学校と高校の連携が重視されつつありますが、それも、それぞれの学校の到達目標が明確でなければ、スムーズに接続するのは困難です。現在、“使える英語”に特化した小学校と、中学校・高校とでは、英語の授業法に大きな開きがあります。双方が改善しながらスムーズな接続をする努力が必要ですが、教師の英語指導に対する考え方や授業法のギャップが大きすぎて、今のところ成功には程遠いように感じています。


―そうした問題に対して、今後、SELHi事業は、どのような側面からアプローチしていくのがよいのでしょうか。


  前述の通り、SELHiの研究成果を一般化させることに力を入れていきます。さまざまな方向性で進められた研究には、他校にも応用できる共通のノウハウが少なからず存在しています。今後、1、2年を費やし、研究成果を分析して普遍的なエッセンスを抽出し、次の学習指導要領の改訂の参考にしたいと考えています。


―最後に、高校の教師に向けてメッセージをお願いします。

  英語教育の未来は、教師の質にかかっています。ですから、常に自分を磨き続ける向上心を忘れないでください。基本は英語力を更に磨くことです。そして、英語教育に対する夢を語ることのできる教師であってほしいと思います。
  そして、授業ではあくまでも“使える英語”を教えるという意識を持ってほしいと思います。一方的な講義だけではなく、スピーキングやライティングなどの活動を通して、生徒が自分の考えを英語で表現するチャンスを充実させることが大切です。そのためには、新たな教材を開発したり、生徒が喜んで参加したくなる学習環境を整えたりする必要もあるでしょう。「覚えろよ」「試験に出るぞ」という言葉を繰り返すだけでは、生徒はむろん、教師も教えていて楽しくはないはずです。生徒と教師が一緒になって英語学習を楽しめる、そんな授業をつくり上げてほしいと思います。

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