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研究内容
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滋賀県立 米原高等学校

研究内容5:4技能を総合的に伸ばす授業形態としてのディベートの指導
■実証したい理論や仮説
新聞記事や教科書等の英文を読ませた後、4技能を用いた過程を経て、最終的にディベートに持ち込むことで、総合的な英語運用能力を向上させる。

<手順例>
手順1 インプット材料を読ませる(DVD等を用いて導入する場合もある)。
手順2 英文を、本文にある英語を極力使うように指示して内容理解の質問に答えさせる(ライティング)。これは、英文の論旨を整理し、英文中の意見と言語材料を取り込むために行う。
手順3 取り入れた情報および言語材料を発信へとつなげるために、口頭での質問に答えさせる(スピーキング)。その際、教師と他の生徒は、必要な情報がすべて網羅されているか、本文中にある言語表現をいくつ使っているかをチェックする(リスニング)。
手順4 ペアまたはグループでディベート準備をする。トピックに対して肯定側と否定側の両立論をたてさせる(ライティング・スピーキング)。
手順5 ディベートをする。当日に肯定側か否定側かを発表し、立論を短時間で完成させ、rebuttalでもYou said ...と同じ内容を反復してから反論させるようにする(スピーキング)。また、生徒同士でジャッジシートを用い、評価する。
手順6 ディベートの後、自分の意見を論文に書かせ、英語の完成度を評価する(ライティング)。


<ディベート論題例>
・日本の裁判員制度導入に向けて陪審員制度について学ぶ。
・模擬陪審裁判
・LOVE MARRIAGE OR ARRANGED MARRIAGE?
・ARE FAST FOOD RESTAURANTS RESPONSIBLE FOR PEOPLE’S HEALTH?
・THE DEATH PENALTY SHOULD BE RETAINED AS A PENALTY OF CRIMES?

<アカデミック・ディベートの指導>
1) スキーマの活性化 - テーマの提示、テーマ設定の理由を英語で説明   
2) 情報の注入 - テキストを読ませ、テーマにかかるさまざまな考え方、データ、問題点などを理解させる。
3) テキストの言語材料の収集 - テキストからテーマについて論じるときに使える表現、語彙などの言語材料を習得させる。語彙等が不足の場合は、別途語彙集を与える。
4) ペアでディベートをさせる。
 1. Affirmativeの1st reasonを述べる。
 2. Negativeの反駁
 3. Affirmativeの再反駁
 4. どちらかの反駁が尽きるまで1st reasonについてディベートする。
 5. Negativeの1st reasonを述べる。
 6. 以下2からの手順に同じ。
社会的・国際的な問題についてのディベートでは、単に自分の意見を感想的を根拠なく述べるだけでは議論が続かない。そこで、生徒に調査をさせたり、こちらからデータを与えたりする。
■到達目標
【成果・検証】
 上記の評価の尺度は大変指標作りが難しく、方法は確立できなかった。しかし、総じて言えば、コミュニケーションへの意欲のある生徒は英語の基礎力も着実に伸ばす。
 入学当初は、コミュニケーションを図ろうとする意欲の高い生徒が必ずしも基礎学力が高いとは限らないが、2年後には、かなりの相関を持ってくることがわかる。このことから、「米原フォーマット」で確立した、負荷を課して基礎力を高める指導と、意欲的にコミュニケーションを促す指導とが連動し、英語の総合力を上げていることが顕著にうかがえる。
4技能を総合的に伸ばすためにこれまで授業で行ってきた方法を統合し、Reading、Writingといった科目の枠に捕らわれないで、最終目標を自己表現に置き、それによって学んだ言語材料を定着させることをねらいとする教授法のメリットは次のとおりである。
1)生徒が常に自己表現を目的として言語材料の学習を行うため、定着が早い。このことはただ解釈のみで理解させることを主眼にした授業との比較で顕著に表れる。
2)自己表現の手段として意欲的にテキスト以外の語彙や表現を発展的に学習するため、語彙力・表現力が伸びる。学んだ語彙や表現を次の自己表現活動に生かすことによりactive vocabularyとして定着する。
3)生徒の問題意識や知的好奇心が育成され、ディベートの授業に好影響をもたらす。生徒の知的関心や高い意識が、総合的な学習の時間などにも波及し、自ら学ぶ意欲の向上につながっている。
4)英語の授業では常にペアワーク・グループワーク、プレゼンテーションなどを行うため、生徒たちは仲間同士やクラス全体で英語を話すことに全く抵抗を示さなくなった。このことにより活気のあるコミュニケーション活動が展開される。
5)自己表現活動を保障するには指導する教員に豊かな英語の表現力が要求される。最初は当意即妙に生徒の発言に反応したり、適切な語句を与えてアドバイスをするということが難しかったが、このような形態の授業を続けることにより、徐々にそれが可能になり、教員の側の力量が高まった。生徒の総合的な力と同時に教員の総合的運用力にも資する方法である。
6)国語科との連携が果たせなかった。特に自己表現の手段としての言語力という観点から、国語科にも呼びかけてディベートやディスカッションをともに取り組むべきであった。また、言語操作能力の基礎の部分の定着のさせ方などを共同研究することができなかったことも大きな反省材料である。教授法については、これまでに述べたもののほとんどが、特定の技能に特化せず、複数の技能を伸ばすことを目的としている。口頭や文字によるより正確で情報量の多いコミュニケーションをめざして、読む活動や聞く活動に明確な目標と方向性を持たせているため、1つ1つの活動は次へのステップとなる。
基礎的な訓練においても、単に文法事項を注入したり、聞いたことを書き取ったりするだけを目的とせず、常に発信の観点を取り入れて教えたり活動をさせたりしている。この時大切なことは、それぞれの活動がどのような力をつけることを目的としているか、次のどんな活動に結びつき、それができれば次に何ができるのかを生徒に知らせることと、ある程度長期間にわたって根気強く続けることである。ディベート指導のような「話す」活動を主とした授業では、対話練習や問題解決のための意見交換の活動を極力読解と関連づけながら行うことが肝要である。
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