「大学や企業のプラス面・マイナス面を含めた多面的な情報を伝え、安易に進路を選ばないよう、『本当にそれでよいのか?』と疑問を投げかけるようにしています。また、説明するだけでなく、就職試験で課される『SPI』などを実際に解いてもらい、学校で学んでいることが将来につながっているということを理解してもらっています」(山本先生)
保護者の出席を促すための工夫もする。事前に配付する出欠確認のプリントには、質問や不安に感じていることなどを記入する欄を設け、その内容を講座に反映させている。当日の中身は最も重要であるが、次回の予告も保護者のニーズに合ったものにするように注意している。1年生の6月の1回目の出席者は60名ほどだが、3年生の11月の最終回には160名ほどが出席するようになる。
「知りたい情報を提供してくれるだけでなく、厳しい現実もしっかり伝えてもらえるという、『土曜日講座』の良さを知った保護者がほかの保護者を誘ったり、母親が父親と共に出席したりするケースもあります」(2学年主任・石原洋一先生)
「土曜日講座」は、生徒と保護者のコミュニケーションを強める成果をもたらしている。「アンケートでは、『子どもと進路についてじっくり話すようになった』という声が寄せられています。生徒に任せきりにする保護者がかなり減ったようです」と、進路指導課の高井基生先生は話す。
進路選択にも変化が生じている。地元志向だった保護者が、子どもの希望に合った進路選択に理解を示すケースも増え、全国の大学に目を向けるようになったという。
今後の課題は、どの教師が講座を行っても同じ成果を出せるように、3年間を見通した講座内容を確立することだ。そのためには、教師側も進路情報に常にアンテナを張り、学び続けることが必要だという。また、安易な進路選択に警鐘を鳴らしても、「それならどの大学・学部を選べばよいのか」と質問されることもまだある。保護者が子どもに合った進路を吟味して選択できるよう、一層早期からの情報提供と、講座内容の充実を図りたいと考えている。 |