データが語る高校の実像 社会観
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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データが語る高校の実像 11
ベネッセ教育研究開発センターの調査から高校生の姿を浮き彫りにする

社会観

現在の高校生は社会をどのように捉えているのだろうか。『第4回学習基本調査』の結果より報告する。

「努力すればむくわれる」は小学生に比べ高校生は低い

 社会観についての質問を小学生・中学生・高校生に共通に行った。図1は、学校段階別の比較で、いずれの学校段階においても「いい友だちがいると幸せになれる」は9割以上と高い。日本の児童・生徒は友人関係をとても重視していることが確認できる。また、「日本は、努力すればむくわれる社会だ(以下、「努力すればむくわれる」)」は学校段階が上がるほど比率が低下し、逆に「日本は、競争がはげしい社会だ」の比率が上昇する。高校生は、競争の厳しさを実感しながら「努力がむくわれない」という思いを抱えている様子がうかがえる。また「いい大学を卒業すると将来、幸せになれる」も学校段階が上がるほど比率が低い。


図1

注1)数値は「とてもそう思う」+「まあそう思う」の%
注2)小学生データの出典は『第4回学習基本調査・国内調査報告書・小学生版』より。調査対象は全国3地域[大都市(東京23区内)、地方都市(四国の県庁所在地)、郡部(東北地方)]の小学5年生で、サンプル数は2,726名。また中学生データの出典は『第4回学習基本調査・国内調査報告書・中学生版』より。調査対象は小学生同様の全国3地域の中学2年生で、サンプル数は2,371名。なお同様の項目でのアジア・欧米の5都市の小学生に行った「学習基本調査・国際6都市調査」の結果をウェブで公開している。

努力の肯定感と学習行動の違いは?

 図2には「努力すればむくわれる」に対する回答別に、平日の家庭学習時間の平均(分)を示した。「とてもそう思う」と「ぜんぜんそう思わない」では8.5分の違いが見られる。更に、図3では同様に家庭学習の頻度をまとめたところ、「ぜんぜんそう思わない」と回答したグループでは、ほかと比べ「家ではほとんど勉強しない」が5~8ポイント程度高い結果となった。このことから努力に対する肯定感が、学習行動にも影響していることがうかがえる。努力に対する肯定感を高めるには、短期的な努力でむくわれることを実感させる場面をつくるだけでなく、高校3年間の長い期間で努力が実ったという卒業生の具体的な例を示すなど、工夫が必要と考えられる。


図2、3
出典●『第4回 学習基本調査・国内調査報告書・高校生版』/調査時期●2006年6~7月実施/調査方法●学校通しの質問紙による自記式調査/調査対象●普通科に通う高校2年生/サンプル数●第4回:4,464名/抽出方法●全国4地域〔東京都内、および東北・四国・九州地方の都市部と郡部〕より有意抽出した同一校に継続的に調査を依頼している。そのため、数値は全国的な平均値を示すものではない。

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