10代のための「学び」考

星野英一

星野英一

ほしの・えいいち
1926年大阪府生まれ。東京大法学部法律学科卒業、東京大法学部教授、千葉大法経学部教授、放送大教養学部教授を歴任。長年に渡り民法を中心とする法改正に従事し、法制審議会民法部会等の委員・部会長を務めた。93年紫綬褒章受章、07年文化功労者。現在は、東京大名誉教授、日本学士員会員。主な著書に『民法概論Ⅰ~Ⅳ』(良書普及会)、『民法のすすめ』(岩波書店)などがある。

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10代のための「学び」考

星野英一

東京大名誉教授 日本学士院会員
小さな疑問を粘り強く考え抜くことが
学問の進歩を生み出す

 日本の民法典の多くはフランス民法典から影響を受けていることを明らかにし、戦後の民法学界に一時代を築いた星野英一東京大名誉教授。一般市民や学生向けの法関連書籍の編纂、民法の普及活動にも尽力した星野教授の法律とのかかわりについて聞いた。

未知なるものに憧れた学生時代

 子どものころから「未知なるもの」への関心が強かった私にとって、本を読むことは大きな喜びでした。小学校に上がる前からクリスマスプレゼントには毎年、本をもらい、世界の国々はどこにあるのだろうと百科事典を眺めたり、『ロビンソン・クルーソー』や『小公女』を読んで外国に思いをはせたりしていました。小学時代に読んだ本で特に印象に残っているのは、少年の精神的成長を描いた物語『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著)です。その中にある「偉大な発見がしたかったら、いまの君は、何よりもまず、もりもり勉強して、今日の学問の頂上にのぼり切ってしまう必要がある」という一節に感銘を受けました。幼心にもとにかく勉強しなければならないことを強く感じ、学問への憧れを抱くきっかけになったのです。
 高校時代は太平洋戦争真っ只中。その影響で、高校生活は2年間に短縮され、勤労動員にも駆り出されて、学校ではろくに勉強できませんでした。しかし、私の通っていた旧制第一高等学校(現・東京大)は、軍国主義の時代にあっても自由と寛容の精神がありました。全国から優秀な生徒が集まる全寮制で、同学年の者や先輩と夜を徹して「本当の意味での良い国とは何だろう」と語り合いました。そんな状況下だったからこそ、学びへの意欲は更にかき立てられたのだと思います。


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