子どものころから「未知なるもの」への関心が強かった私にとって、本を読むことは大きな喜びでした。小学校に上がる前からクリスマスプレゼントには毎年、本をもらい、世界の国々はどこにあるのだろうと百科事典を眺めたり、『ロビンソン・クルーソー』や『小公女』を読んで外国に思いをはせたりしていました。小学時代に読んだ本で特に印象に残っているのは、少年の精神的成長を描いた物語『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著)です。その中にある「偉大な発見がしたかったら、いまの君は、何よりもまず、もりもり勉強して、今日の学問の頂上にのぼり切ってしまう必要がある」という一節に感銘を受けました。幼心にもとにかく勉強しなければならないことを強く感じ、学問への憧れを抱くきっかけになったのです。
高校時代は太平洋戦争真っ只中。その影響で、高校生活は2年間に短縮され、勤労動員にも駆り出されて、学校ではろくに勉強できませんでした。しかし、私の通っていた旧制第一高等学校(現・東京大)は、軍国主義の時代にあっても自由と寛容の精神がありました。全国から優秀な生徒が集まる全寮制で、同学年の者や先輩と夜を徹して「本当の意味での良い国とは何だろう」と語り合いました。そんな状況下だったからこそ、学びへの意欲は更にかき立てられたのだと思います。
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